「新暗行御史」最終１７巻 尹仁完・梁慶一著

　今日紹介の漫画もこれまた完結編で、「新暗行御史」というサンデーGXで連載されていた作品の最終巻です。
　著者(および原作者)名が、尹仁完　梁慶一であることからもわかる通りに、韓国在住の韓国人の方が連載していた作品ということで、日本の漫画歴史上においてはちょっと得意な位置にあるこの作品、内容のほうも、李氏朝鮮時代に実在した暗行御史(アメンオサと読む)という官職名を題材にしたアジア的なファンタジーでかなりオリジナリティが強い作品となっています。それだけに、登場人物が文秀(ムンス)、春香(チャンヒュン)、解慕漱（ヘモス）、阿志泰（アジテ）とあちらの名前が並んでも違和感がありません。
　物語は、主人公の文秀が、聚慎という京大な統一国家が崩壊してしまった後の世界で、この世界を滅ぼした阿志泰を倒す為に旅する物語で物語中盤からラストまではその戦いのための伏線と、世界がどうして滅びてしまったかがカットバックを多用する形で描き続けられ、物語としては最初から最後まで一貫してぶれずに終わった物語です。ただ、実名の人物(挙げた名前は、それぞれ歴史上の人物から名前が取られていますが、高句麗の歴史などに詳しくないとまったくわからないのでそれは気にしなくてもいいといえばいいですが)を挙げていたりして、韓国や朝鮮半島の歴史に詳しいと二重に物語を楽しく読めるようになっている等、なかなか考えられた作品でもあります。
　とはいえ、基本的には娯楽作品なので難しく背景など考えずに楽しむのが一番。アジアンファンタジーと書いたように、剣の戦い一辺倒だけでなく、妖怪や悪魔や召喚魔法なども登場します。主人公も然りで、彼は馬牌という馬が彫り込まれた大降りなメダルを持ち歩いていますが、いざ時がきたときに、それを掲げて「アメンオサのおでましだ!」というと幽体の戦士軍団が女性にかけつけたり、彼自身よりもどう考えても彼の護衛役の女性の山道(サンド)のほうが強かったり、そのあたり楽しんで読めます。
　しかし、そうした物語もこの最終巻で完結を迎えるのですが、最終巻はかなり壮絶な展開でラストはかなり衝撃的です。前巻あたりからどんどんと味方が倒れていましたが、この最終巻でも激しい展開の中、幾人かが最終決戦で命を落とします。それだけの犠牲を払ってなお、果たして主人公・文秀たちは悪魔である阿志泰を倒せるのか。壮絶な終わり方は本編をご覧下さい。
　、、とここまで書きましたが、実は、このコミックス版のラストは、本編連載時と違うという事が帯に書いてあります。
　えー?? ってな感じですが、自分同様にコミックス版でしか読んでこなかった人間には連載時の最終話をいまさら見る方法はありませんが連載で追っかけて来た人は是非ともその違うエンディングを見比べてもみて下さい。
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新暗行御史 第17巻 (サンデーGXコミックス)

　追記　この記事で韓国のことを取り上げたので、同時に取り上げますが、「韓国統一省は7日、政権引き継ぎ委員会の業務報告で、李明博次期大統領が提唱する北朝鮮支援に向けた400億ドル（約4．4兆円）規模の国際協力基金構想に関連し、「日朝関係改善による『賠償資金』が約100億ドル（約1．1兆円）になる」とする推計を明らかにした」というニュースが入っています。せっかく若い世代がマンガだったり音楽だったりドラマだったり食文化などで近づいていても、こういう冷や水をぶっかけるようなというか、今迄の歴史的経緯や戦後補償の完結性を根本から覆すような話題がふられるのには困った物です。