小説・漫画好きの感想ブログ

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「子産(上)(下)」 宮城谷昌光著

 こんばんは、樽井です。
 ここのところ、どういうわけだか家できちんとパソコンに向かって何かをするという気がなかなか出ずに更新が遅れました。ブログ自体は嫌いではないですけれど、どうしてか、ときどきこうした波が出ます。他のサイトをみてまわっていても、どなたもそういうことがあるようで、不思議なものですね。
 さて。今日は一日休みだったので、テレビでニュースをずーっと見ておりました。額田財務大臣と防衛省の疑惑の話だとか(それはそれとして舞台になった、料亭の浜田家さんは東京ミシュランガイドとダブルパンチでえらくメジャーになりましたね)、石破防衛大臣が、山田洋行に対して詐欺としての刑事告発して立件を進めるという話だとか、あと変わったところでは、香港ディズニーランドの観客動員が予定よりあまりに悪くて早期に資金返済をしないといけなくなった話とかそういうのを見ていました。日中家にいない生活をしていると、ニュースを見るのがとても楽しいのが不思議です。
 テレビで見るのと新聞で見るのとはまた違った感じです。
 さて。


 「子産(上)(下)」 宮城谷昌光


 今日紹介するのは、宮城谷昌光さんという方の本で、このサイトでも前に「史記の風景」という本をレビューした事がありましたが、素晴らしい歴史小説の書き手で、当代の日本作家の中国もの小説ということでいえば文句なく日本で一、二の書き手さんの本で、問題なく誰にでもお勧めしたい本です。宮城谷さんの小説は、いずれも主人公が精神的に成長していく様がしっかりと描かれ、精神のありようや、心胆のおきようとはかくあるべきだというような理想の形が小説の面白さの中に奇麗に通っているので、いつも読みながら姿勢がすっと正しくなるかのような感覚があります。
 今回の御紹介の「子産」もその例に漏れず、春秋戦国時代を通じて一番の知識人といわれた子産の生涯が、子産の父の代から書き起こされていますが、どこを読んでいても気持ちが澄んでいく感じがしました。また、その中のここかしこで精神と礼のあるなしによって周囲が栄えたり没落していく様が描かれていて、これらを読むと毎日の自分の周囲への発言や対応に対してあれこれ考えさせられるものがありました。
 子産が生まれた鄭という国は、中華の真ん中にあり、交通の便もよくどこにでもいける代わりにどこからも狙われる土地ともなり、子産がいた時代には北の晋と南の楚のいずれからも攻められ、北に攻められれば南を頼り、南に攻められれば北を頼り、どちらにも贈り物をし続けなければいつ国が滅びるかもわからないという過酷な状況にありました。そして、年ごとに仕える国を変え、周囲からも節度や信義のない国として扱われていました。国主の公でさえ、忍従を強いられる国である鄭。そんな国の貴族の息子ちとして生まれた子産が鄭を一つの信義の国として作り上げるまでの姿は、山あり谷あり、歴史小説としても読み応えがあります。
 お勧め度は文句なく5の5てす。
 

子産(上) (講談社文庫)

子産(上) (講談社文庫)