「シグルイ」 15巻 南條範夫原作・山口貴由著
山口貴由画伯の時代劇漫画、「シグルイ」最新刊にして最終巻です。
この「シグルイ」という作品、てっきりそのおどろおどろしくもオリジナリティー溢れる雰囲気からオリジナル作品かと思っておりましたが、原作がある作品でした。南條範夫さんという時代小説の大御所の「駿河城御前試合」という作品がそれなんですが、作中に出てくるキャラクター造形がある意味とても漫画的であり、実に漫画にはまっています。盲目の美剣士に、隻腕の剣士、けなげな美少女に、毒婦、少し頭のふれたサディストの殿様。舞台立てがまさに、漫画的な構図にぴたりとはまります。
山田風太郎の忍風帖シリーズを漫画化したシリーズがありますが、あれと同様に、作品と漫画家さんのタッチが見事にマッチしてはまりこんだ作品の一つにこれも挙げていいと思います。
さて。
内容のほうですが、数々の因縁のもとに不倶戴天の敵となったさきほど挙げた二人の剣士、藤木源之介と伊良子清玄が御前試合として真剣で立会うシーンがこの物語の最後のシーンとなっております。隻腕ながら剛剣といっていいほどの力強さを会得している藤木、そして見るからに妖しい剣法を駆使する伊良子。ともに、お互いの剣と魂に惹かれながらもぶつかりあう二人の間には濃密な空間が広がり、、、、なんだか違う意味で妖しい小説のようでもあったりします。
大枠は、史実、、、なんですけれどね。
まま、それはさておき、この漫画の紹介をする以上避けて通れないのはこの人のタッチというか絵柄ですね。過去作品においてもそうでしたが、この人の描く人物、描写は写実的なのを通り越して、エロティックなのも半ば通り越して、どこか肉体美それそのものにすごい執着をもっているように感じられてなりません。そして、その度合いが甚だしくこの作品ではとても強いです。ところどころで、衣服をつけているはずなのに、裸で登場人物が描かれているんですが、それがとてもなんというか生々しいのです。
なので、作品そのものよりも、絵柄的にこの人を受け入れられる人と受け入れならない人がきっぱり別れるのがこの漫画家さんのカラーだと思います。次回作は、過去作品の「覚悟のススメ」の続編のようですが、がんばってほしいです。
近々なんとか南条さんの原作本も読んでそちらの感想もアップしたいと思います。
- 作者: 南條範夫,山口貴由
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2010/10/20
- メディア: コミック
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