「銀河不動産の超越」 森博嗣著 感想
いい意味で力が抜けている連作短編集。
社員がたった二人しかいない、町の小さな不動産屋さんに就職した青年が主人公。平凡で、気力というものを実感したことがないというくらい徹底的に省エネな、流され型の性格の主人公が、まわりのちょっと突出した人物にひきずられていくという典型的なパターンのお話。ある日、客として訪れた土地の大金持ちのお嬢さんに不思議な物件を紹介したら、その物件を気にいったお嬢さんに流されるままにその物件に住むことになってしまった主人公。普通ならそのお嬢さんが本筋に流れこんできそうなものですが、この小説では、それ以外の色々な客達がその主人公と不思議な関係をもって奇妙な関係を結んでいくことになります。
最初に書いたように、いい意味で力が抜けているお話で、軽い読み物としてはとてもよいと思います。不条理、ちょっと奇妙な登場人物が好きな方には是非ともお勧め。同じ森博嗣作品で例えるなら「少し変わった子、あります」のような味わいですが、あそこまで静謐なものではなく、奇妙さはああいう系統でありつつ明るい作品に仕上がっています。
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/09/08
- メディア: 単行本
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