「ロハスの思考」 福岡伸一著
ロハスについての概観入門書といった感じの一冊で、ロハスとはなんぞや? と思っている人間にはちょうどよいレベルの本でした。なんだか漠然と環境問題とひとくくりでイメージされている「ロハス」読む前までのなーんとなくのイメージは、健康的で、オーガニックで、自然との調和を模索していて、ファーストフードを食べずに、ゆったりとした時間の流れを生きるような生き方をイメージしていました。そして、それはまぁ結論からいったら、それがまったくの正解で、ロハスはズバリそういうものなんですが、なぜロハスというのはそうなのか? どこからそういう思考がきているのかといった事が書かれていました。
たぶん、この本は、今現在のロハス的なものを展開している層にとってはバイブルというかよりどころの基礎教典になっているのでしょうね。だから全員が同じことをロハスについて語る。アピールする。だからこそ、僕のような門外漢が勝手にイメージしても、正しく誤りようがないくらい、ロハスとは何かということを漠然とながら知っていたのでしょう。
そう考えるとなかなかに恐ろしいメッセージ性です。
まぁ、とはいえ、基礎理論だからかも知れないけれど、話は多岐に渡るし、部分部分、著者の専門分野(生物学の話でクローンやBSE・狂牛病の話のパートなど)では話がくどくなったりするかと思えば、ワンカリ・マータイ女史の「モッタイナイ」については軽かったり、宣伝効果を最大に考えてか坂本龍一やヨーヨー・マとの対談なども入っていたりとちょっとだけとっちらかったような印象になっちゃっているのが少し残念。またイデオロギーが入ってしまうこういう新書形式の弱点として、どうしてもそこでそう断言してしまってもいいのかという所を一方的に断定してしまったり、思想的には逆サイドのものをダメと決めつけてしまう傾向がどうしてもあったりするのですが、この本は比較的かなりそういう部分が少なかっただけに、いっそ全くなかった方がもっとスッキリしたのにとここも残念です。
とはいえ、他のこうした本に比べれば全然及第点以上の出来だったので、新しいバージョンでより思考を深く詳しくしたものが出版されることを望みます。
最後に、蛇足ながらですが、ロハスとは一つのパラダイムシフトの転換であり、ムーブメントだという事がこの本では強調されています。
- 作者: 福岡伸一
- 出版社/メーカー: 木楽舎
- 発売日: 2006/06
- メディア: 新書
- 購入: 2人 クリック: 38回
- この商品を含むブログ (24件) を見る