「名短篇、ここにあり」 北村薫・宮部みゆき編
読書量の半端なさでも知られる北村薫と宮部みゆきが短編小説の名作を集めたのであれば、さぞや面白かろうということで期待していたんですが、ちょっとイメージしていたのとは違いました。これはもうこちらの勝手な思いこみが先にあったからかも知れませんが、どちらかといえば古い感じの昔の小説が多かったです。
もちろん、古くても切れ味の鋭い作品であったり新鮮な驚きがあるようなものなら万々歳ですが、このアンソロジーに含められたのはどちらかというと、語り手の上手さ、文章の上手さのほうに比重が傾いてしまったのかなという気が個人的にはします。落語的なのもあれば、不条理もの、ショートショートもの、ちょっとホラー風のものと各ジャンルあるんですが、最近のエンターティナー性の高い作品に毒されすぎているのか自分の感覚には強く訴えかけるパンチ力がややたりない感じです。
それぞれ、さすがに上手いと思うのですが、あんまり「面白い!」というのはありませんでした。どちらかというと、なるほどこういう出来事もあったんだね、的な、ある意味では昔の新聞を読んでいるような感覚でした。強いて一つだけ作品をあげるならば「少女架刑」という作品がけっこう奇妙な味がありました。死亡した少女が死んだあとも自分をたんたんと眺め続ける作品で、「夏と花火と私の死体」だったかな、乙一さんの作品で同様なのがありましたが、あれのさらに淡々とした版で最後の最後のところまでどうなっていくのかと気になりました。
それ以外で逆にこんなの許されるのと思ったのが「的の男」という作品で、殺人計画ものなんですが、あまりにもぐだぐだでこれが「標的」とかいうタイトルで連続ドラマ化していたというのが信じられないくらいです。プールで泳ぐ老人を投網で殺そうとする話なんですけれど、、、。短編なんで立ち読みしてもらったら脱力すること請け合いです。
そんなわけで、評価としては5の3です。
- 作者: 北村薫,宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/01/09
- メディア: 文庫
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