小説・漫画好きの感想ブログ

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『大使閣下の料理人』 かわすみひろし著

 なにげにこのマンガ紹介にアップされたマンガの中で食べ物がらみのマンガが多い事に今気づいてしまったんですが、今日もまた料理がらみのマンガです。


 『大使閣下の料理人』  全25巻  西村ミツル かわすみひろし著 

 主人公の大沢公は一流ホテルのフレンチのシェフだったが、相手に心の届く料理を作りたいという気持ちから食を辞し、ちょうど募集のあった駐ベトナム大使館の大使専属の料理人となった。妻子を日本においてベトナムに旅立った彼は、現地の補助職員のホアや、外務省職員の古田たちと一緒に、大使の為に(というよりは大使が招く各国の大使やベトナムの外務大臣や大統領の為に)腕をふるって料理を作ります。フレンチのシェフではあるものの、自由自在に各国の料理の良さを取り入れ、相手の心に届く料理をと願う彼の料理は、おとずれるゲストたちの心を癒していきます。
 日本人は繁栄に驕りたかぶっているということで怒ってしまった大統領の心を一つの食材を隅から隅まで使い尽くす事で納得させ、復讐心に燃える中国大使の心を幼い時に食べた真心のこもった食材で溶かし、また目が見えない人のために香木を使った料理で記憶をひきだしてあげたり、と料理に不可能はないのかと思わせるくらいの心の変化を料理一つでなしとげていきます。しかも、設定的には彼はフレンチのシェフとしてはある程度レベルまではきているものの、まだまだ発展途上の人間であるとした上でです。作者にとっては、天才的な料理人でなくても、心のこもった料理であれば相手を動かせる(もちろん伝えたい事を料理の上で伝えられるだけのレベルはいるでしょうが)という事なのでしょう。
 実際、彼は物語の最初ではベトナムには新鮮な食材はないということで嘆いたりもします。そして、高級な食材を使う事が大事だという風に思っていた時期もあると述懐します。でも、それでも彼は料理に対する真摯な姿勢や、相手に気持ちを伝えたい一心でいろいろ工夫し、足で食材を探し満足のいく一皿を常に作ります。
 ただ、この漫画の凄い所はそこだけに話がとどまらないところです。
 そうした料理漫画としてのツボを押さえながらも、この漫画では実際の世界情勢を反映させた物語、外交のそのときどきの話題のテーマをしっかりと作品に取り入れていきます。彼の雇い主である倉木大使は、公の料理を使いながら、諸外国や日本からやってくる大臣たちと外交戦を繰り広げます。ときにはゲストの過去を知り尽くした上での一皿まで出てきます。このような外交官というなじみのない職業の人達の活躍を描いたところには、原作者の西村ミツル氏自身が、現実の世界で本物の大使公邸料理人だったという事実による影響も大きいと思われます。

 現在 この物語の続編? が週刊バンチで連載されています。主人公とかは変わっていますが、まぁあの雑誌はそのパターンでシティハンター北斗の拳ゴッドサイダーも山下たろー物語もやっているのでまぁありっちゃあなんでもありの雑誌なんで、それはよいのでしょう。

大使閣下の料理人 (25) (モーニングKC (1525))

大使閣下の料理人 (25) (モーニングKC (1525))