「空飛ぶ馬」 北村薫著
もやしもんがどうしても見つからなくて気になっていて、いろいろ探しまわった結果、関西テレビでは12日遅れての放送という形になっているらしく、毎週火曜日の深夜になるそうです。関東地方、フジテレビの見れるエリアの人が本当にうらやましいです。
しかし、、、12日遅れっていうのはどんなものなんでしょうねぇ。そんなに遅れるならどうせ二週間遅れくらいでやってくれてもいいんですけれどねぇ。あぁ、あの菌たちが「かもすぞー」というかけ声のもとに飛び回る世界を早く見てみたいです。
さて。
いきなり唐突ですが、今日の本紹介はミステリにいきます。
このシリーズも京極堂シリーズ同様にもっともっと評価して欲しい、読んで欲しいシリーズなのでひっぱりだしてきました。
「空飛ぶ馬」 北村薫著
北村薫の、この「円紫師匠とわたし」のシリーズは人が死なないミステリながら、謎解きの本格的な面白さと主人公が徐々に成長していく青春小説としても非常に完成度の高いシリーズ作品で、この後に続く「夜の蝉」や「秋の花」と同様に主人公の<わたし>が成長していく姿が連作短編集という形で描かれています。
シリーズ第一作の本書では、主人公は大学の一年生。
友達と楽しく学園生活を送る女子大生ですが、どちらかといえばわりと地味目、メイクもあまりしない、落語と読書が大好きな女の子です。こう書くと、魅力的でないように聞こえますが、実際には優しいし地に足がついているしきちんと家のこともするしといったある意味文系男子の理想的な女の子です。それだからこそ、ときに批評的に「人間っぽくない」なんて書かれたりもしますが、彼女が日常の謎を謎解きのお師匠さんになる落語家の「円紫」師匠と話しているのを聞くと全然そんなことはなく、人間の暖かいところも素晴らしいところも底意地の悪いところもしっかりと理解できる、ある意味、年齢以上に人をじっと見ている人間だということがわかります。
そして、その視線はあくまで優しくて柔らかくて、それだからファンは何度もこの本を読み返すのだと思います。
とはいえ、作中では主人公はまだ大学の一年生ということで、行動範囲も狭く、出会う謎も身近なものが多いです。派手な事件も、複雑な人間関係もそうありません。が、逆にそれだからこそ、そんな彼女が日常でであう小さな謎から大きな見事な解決が提示されるカタルシスは他の本格ミステリに勝るとも劣らないものがあります。むしろ、日常のちょっとした謎や、不可解ないたずらのような事件から、人間の本性が見えてくるような気にさえなって、人が死なない普通の人のミステリをもっと読みたいという気にさせます。
短編連作集という形式なので、電車通勤の合間やちよっとした時間に一遍ずつ読めます。
猟期殺人やシリアルキラーや異常者が大量に出てくるミステリに疲れたら、ほっとひといきこういうのもいいんではないでしょうか。かなりおすすめの一冊です。
- 作者: 北村薫
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1994/03
- メディア: 文庫
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