小説・漫画好きの感想ブログ

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「街場のアメリカ論」 内田樹著 感想 

 去年だったか、一昨年だったか同じ作者の「下流指向」という現在の若者について喝破した本を読んでいたく感銘を受けた。
 どうして現在の30代以下の人間はそういう行動を取るのだろう、何故価値観がこうも違うのだろう、などなどと教育関係の職について悩んでいた問題について、ズバリ納得の説明をしてくれた本でここでもずいぶんと絶賛させてもらった。これこそは、絶対に読んで欲しい本だとまで書いたように思う。
 この「街場のアメリカ論」という本も、実はその同じ内田樹さんの本なのである。
 とはいえ、正直著者名をしっかりと覚えていなくてたまたま手にとったので最初は気づいてなかった。ただ、よんでいくうちに、中身の論旨展開の分かりやすさと主張の明快さ、また語り口の安定感が実に自分的にはツボだったので、改めてこの人は他にどんな本を書いているのだろうと調べてみると「下流志向」と同じ方の本であるということがわかりとても驚いてしまった次第である。押しつけがましくなく、でも、そこに鋭い示唆があるこの人の語り口や切り口が自分にとってはちょうど合うのだろう。
 ちょっとこの方の他の本は追いかけてみたいと思う。
 
 さて。本書。
 この本はタイトル通り、アメリカについての論考集である。何故アメリカという国はああであるのか、日本とアメリカの関係について、日本はどうしてアメリカに対して現在のようなスタンスしか取れないのかといった問題に始まって、アメリカという国が抱える問題や傾向について鮮やかに論が展開されるのが心地よい。
 ヒステリックになることなく、たんたんと、色々な角度からアメリカについて語っている本書は是非読んでもらいたい本である。トピックとして出てくる「どうしてアメリカ問題については専門家がいないのか」「アメリカは政治家や統治者がダメな人間である可能性から、そういうダメな人間でも実害が出ないようなシステムを組んだんだ」という話や「理想国家として完成形態から始まったアメリカ」「戦争に勝つことに以上に装飾するアメリカ」というのはなかなか読み応えがあった。
 自衛隊のことや憲法第9条のねじれのことをアメリカンコミックやガンダムなんかに絡めたりする軽やかさもありつつ、根っこのところで本当に鋭い分析がなされているところなども実に好みである。。。なんだかべた褒めで気持ち悪いかも知れないが、良著。お勧めである。
 

街場のアメリカ論 (文春文庫)

街場のアメリカ論 (文春文庫)