小説・漫画好きの感想ブログ

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もっと煮え煮えアジアパー伝 鴨志田穣と西原理恵子 

 この本は、西原理恵子鴨志田穣の二人の共著であり、アジアパー伝というシリーズの四作目である。
 鴨志田氏がアジアでルポしたこと、自分が体験したことをそのまんま書いた本に、西原が本編と関係が深いような全く関係がないような漫画を添えている。鴨志田氏のルポは、社会正義を訴えたものでもないし、ルポルタージュといった社会派のものではない。各地をあちこち放浪したり飲み歩いたりする中で拾ってくる生のアジアの、裏側の営みである。当然売春婦の話もでてくるし、日本と違ってそれが十代の前半の子供だったりする本当に生々しい話だったりするし、警官や税関の腐敗の話もふんだんに出てくる。痛々しいような笑い話としてそういうのが出てくる。
 そして、いつもながら思うのだがこういう文章を書いているときの鴨志田氏は、西原理恵子の旦那として漫画にでてくる鴨ちゃんとは大違いにクールでシニカルである。酔っぱらってぐだぐだになって情けない姿になったりはするが、ある意味、かっこよいキャラクターにも見える。鴨ちゃんとイコールで結べなくなる。けれど、逆にそういう人だからこそ、現実を直視しすぎて酔っぱらわずにはいられないのかなと妙にすとんと腑に落ちてしまうところもあった。
 実のところ、この本は先日亡くなった鴨志田さんの追悼のつもりで買ったわけだが、読んでいるうちに本当に実に良く彼のことを思い出せた。文庫版のあとがきの鴨志田氏の禁酒の話からは、彼の死が予測できず、なおさらつらかったけれど、鴨志田さん、西原さんどちらかのファンの人には是非読んでもらいたい一冊である。
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もっと煮え煮えアジアパー伝 (講談社文庫)

もっと煮え煮えアジアパー伝 (講談社文庫)