小説・漫画好きの感想ブログ

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人間失格 太宰治 

 おはようございます。樽井です。
 えー、薮から棒にですが、太宰治人間失格です。作品タイトル、作者ともに超有名で知らない人もたぶんいない本だと思います。まぁ、作品としては芥川さんだとか夏目漱石さんだとかと同じく文豪世代、美術でいえばオールドマスターズの時代のようなもので、昔の話になりますが、時代に耐えた作品群だけあってやはり面白いです。
 特に、この「人間失格」は太宰治の自伝的小説であるという前フリ・事前知識を抜きにしても面白いです。中身としては、暗いし、屈折しているし、本人はもうこれでもかというくらいダメ人間の独白なので、前向きな作品ではないです。ひょっととしたら今の若い世代の方は洟にもひっかけないかも知れません。一読、「暗いし、最低」などと言うかもしれません。
 しかし、主観でいえば圧倒的に面白いです。
 樽井自身が暗いのかも知れないけれど、この作品には強烈に何か惹かれるものがあって、今までも文庫版だけですけれど、旅先などでつい新装版を買ったりすることがあってもう5回くらい読み返しています。そして、今回の新装版も実は買い直しておりました。というのも、今迄にないタイプの表紙で、「やられたな」と思ったからです。
 今回の表紙、実は、小畑健さんなのです。
 あの「DEATH NOTE」、デスノートの小畑さんの表紙なのです。新しい人間失格の表紙は、学生服の高校生が椅子に座って正面からこちらを見ているというものなのですが、まさにそのまんまライトです。キラなのです。これには、やられたなと思います。嘘の多い、仮面をかぶった、自意識の極度に肥大化した主人公のニュアンスを微妙に伝えるためにもってきたことも、「まぁ売れるだろう」と集英社が踏んだのも、その辺の狡猾さも、なにもかもがすべてひっくるめて「人間失格」という太宰の作品にばっちり嵌っていると思ったからです。
 あざといといえば、あざといのですが、これでこの作品がさらに若い層に読まれるなら、ジャンプをかかえる集英社ならではの持っていき方に技ありと言いたいです。
 実際、作品そのものの価値に加えて、表紙でさらに売れるということはよくあって、森博嗣さんの「スカイクロラ」のシリーズも素晴らしく美しい空の写真と装丁の勝利で確実に売れていると思います。このあたりも含めて、「やられたな」と思いました。なんせ発売から2ヶ月弱で7万5000部ですからね。異常な売れ行きです。
 たまには、こういう古典的名作も良いのではないでしょうか。

 

人間失格 (集英社文庫)

人間失格 (集英社文庫)