小説・漫画好きの感想ブログ

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「人生の一椀 小料理のどか屋 人情帖」 倉阪鬼一郎著 感想 

 倉阪鬼一郎さんの人情料理ものの一冊です。
 高田郁さんの「みをつくし料理帖」などと同系列の作品です(最近この系統が増えたというかジャンルとして一つ認識されてきたような気がします。池波正太郎の昔から時代劇とおいしい料理と人情ものはいい取り合わせではあったのですが、味付けとしてではなく、料理がメインになったものとしてジャンル確立されてきた感じがします)。
 さて。
 正直、最初はこの本ホラーテイストもあるのかなと思っていました。というのも表紙がけっこう怖い絵柄なのと、倉阪鬼一郎さんという作家さんが今までかなりの数のホラー作品を書いておられて、ご本人さんもかなり怖いという事を聞かされていましたので、そう思っていたのですが、中身は全然そんなことなくて、普通にちょっといい話の感動系のお話でした。
 主人公は料理人は、表紙とは関係なく時吉という名の元武士のわけあり料理人。彼が何故武士を捨てて料理人になったのか、どういう経緯でのどか屋という名前の小料理屋を出すことになったのかはこの作品で明かされますが、まぁ筋としてはいたって普通のお話です。出てくる料理の方も、奇想天外なものや、奢ったものはあまり出てきません。むしろ、作者がいうように、下から出す料理を心がけたものが続きます。
 なので、感動の巨編とか、すごい料理を期待して読むと肩すかしを喰らいますのでご注意。でも、こういうのって、箸休め的に読むと胃もたれせずによい感じです。旅のおともにのんびりゆっくり読んだりするのには最適かと思います。
 あ、あと俳句を詠むシーンが所々出てくるのですが、これは倉阪さんが俳人であるところから来ているようです。僕は不風流な人なのでその良さがあまりわかりませんが、俳句が好きな人が読むと「これは素晴らしい」というのがあるかも知れません。

人生の一椀 小料理のどか屋 人情帖 (二見時代小説文庫)

人生の一椀 小料理のどか屋 人情帖 (二見時代小説文庫)