小説・漫画好きの感想ブログ

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「エキゾティカ」 中島らも著 感想 

 中島らもの短編集。
 中国をはじめとした東南アジアの中世・近代・現在を舞台にした短編作品集で、中島らもの作品と言われなければそうとは気づかないくらいしっとりした風情の作品も含む、ちょっと不思議な話ばかりを集めた本です。現実と少しずれたところにある世界、現実にふと転がり込んでくる異世界、不可思議な、まるで説話集のような感じでもあります。
 例えば、こんな話。
 宝石を掘る井戸の底で働く男が、彼だけの神様に祈っていると、ある日その井戸の底にその神様が現れ、男に大きなルビーを与える。男はそれを元手に貧乏から抜け出し、ついには国一番の大金持ちになり、人身位を極めるが死の直前に神様と再び出会う。男はルビーを渡されたときにした約束を守らなかったが、今から全財産を人々にすべて分け与えるなら寿命を伸ばしてやろうといわれる。男はそれに対して「死んでもいやだ」といいその申し出を拒絶する。。。
 中島らもというと、馬鹿話ばかりやってて、お酒とかマジックマッシュルームとかのイメージが強いですが、こういう作品を読むと、らもさんは早く逝きすぎだよ、もっともっと色々な作品を書いておいて欲しかったよ、と強く思いました。