「機械探偵クリク・ロボット」 カミ著 感想
ハヤカワのポケミスががらりとデザインを変えてきました。
少し前までは、油彩かアクリルの抽象画みたいなものだったのですが、最近はちょっとおしゃれなデザインに切り替わりました。切り替わった第一段階がデイヴィッド・ベイオフの「卵をめぐる祖父の戦争」という本になるのですが、その切り替わる前の最後の一冊が本書「機械探偵クリク・ロボット」となっています。
これは、長年想定を手がけてきた勝呂忠さんが死去されたことにともなう変更で、新しい担当は水戸部功さんという人で、最近の時の人、マイケル・サンデルの『これからの「正義」の話をしよう』の表紙もつとめてられているイラストレーターさんに代わります。
早川のポケミスといえば、あの抽象画がぱっと思い浮かぶので当分はちょっと本屋さんで戸惑いそうです。
さて。
内容のほうですが、本書は、いたってユーモラスなミステリです。なんといったって、出オチのようですが、タイトルそのままに、本物のロボットが登場して事件を解決するというのですから夢があります。しかも、そのロボットというのが外見的にはロボット三等兵、いやもっと古いタイプのブリキの直方体を組み合わせたようなロボットであり、なおかつそのロボットに搭載されているのがこんなユニット群なんですよ。笑ってしまいます。
例えば、手がかりキャプチャー、推理バルブ、仮説コック、短絡推理発見センサー、解読ピストン、真相濾過フィルター、誤解ストッパー、、などなど。ミステリ用語のオンパレードだけれど笑っちゃいます。
ネタ的にも、ここまでくるともう楽しまなくては仕方がないし、思わず笑ってしまうではないですか。今までのアニメや特撮ロボットにも色々な名前のシステムは組み込まれていました。良心回路、空中元素固定装置、V-MAX装置、トランザム、加速装置、サイコミュ装置などなど。でも、そういうのとは一線を画した、このミステリのためだけに特化したシステムのネーミングにはもはや脱帽としかいいようがありません。
そういうノリなので、作品の中のミステリトリックや謎解きも、いたっておふざけなノリです。捜査にあたる警察は、レストレード警部もかくやというくらい役に立たないし、殺人事件の死体は死体で頭にナイフが刺さったままで「検死を要求する」と声高に主張するし、ロボットは事件解決の証拠を食べてしまったりもします。
でも、たまにはこういう、ゆるーい、時代を感じさせるミステリを読むというのも悪いものではありません。
古き良き時代という感じで楽しめます。
機械探偵クリク・ロボット〔ハヤカワ・ミステリ1837〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
- 作者: カミ,高野優
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/06/10
- メディア: 新書
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