小説・漫画好きの感想ブログ

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「珈琲時間」 豊田徹也著 

 珈琲好きにとってはタイトルだけでも手に取ってしまう一冊ですが、、、文句なく当たりの一冊でした。豊田さんという方は初読みだったのですが、いい短編作品集で、こういう方であれば、ちょっとおっかけてみようかなという気になりました。お勧めです。
 内容のほうはといえば、珈琲時間というタイトル通り、コーヒーが短篇それぞれの共通項として出てきはしますが、コーヒーがお話のメインであるのもあれば、一つのアイテムとして出てくるだけだったり、主人公たちが飲んでいるだけだったりと、コーヒーを主軸にしたお話作りでは決してありません。だから「珈琲どりーむ」やら「珈琲物語」のようなものを期待して読むと肩透かしを喰らうかも知れませんが、飄々としたタッチの日常のスナップ的なものやショートショート的短篇の積み重ねが実にいい味を出していて、漫画がそんなに好きでない人にもすっと受け入れられる作品ではないかと思います。
 また、これを読むと、ちょっと美味しい珈琲を飲んでみようかなという気になるかも知れません。
 たぶん、それはストーリーの良さもさることながら、絵柄の良さにも起因していると思います。一番近いタッチはちょっと古いけれど江口寿かな。すらっとした線でデッサンが確か。綺麗。でもちゃんと動きもある。ただ、カットによってはそのまま何かのCDジャケットに使ってもいいくらい様になっている。そういう絵柄です。これは万人受けですね。
 そんなわけで、マニアックな蘊蓄があるわけでもないけれど、これは短編小説のような良さも兼ね備えた漫画短篇集です。お勧めですよ〜。