小説・漫画好きの感想ブログ

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「スクール・デイズ」 ロバート・B・パーカー著 感想

 海外ミステリの定番、スペンサー・シリーズの文庫最新刊。
 今回の物語は、私立のハイスクールで銃乱射事件を起こして七人の教師と生徒を殺した二人組の少年の片方の祖母が、自分の孫のジェレドの無実を証明してくれと私立探偵のスペンサーに事件解決の依頼をしたところから始まります。しかし、この銃乱射事件では、もう一人の少年のグラントが現行犯で捕まり、彼がジェレドが共犯だったと語り、本人もそれを肯定しているという、どう考えてもジェレドの無罪・無実はあり得ない状況。それでもスペンサーは真実を見つけるべく調査を開始するのですが、学校長も地元の警察も学校の心理カウンセラーも揃って、事件はもう解決したものとして彼の介入を嫌がります。本来であれば、少年を助けるはずの両親や、弁護士までもが事件はもう終わったものとしたがります。
 そこに奇妙な違和感を覚えたスペンサーは、単身事件解決に乗り出すのですが、出てくる証拠や新事実も少年が真犯人であることを示す事実ばかり。果たして彼は事件の真相にたどりつけるのか。。。
 というようなお話なんですが、前作が相棒のホークが主役といっていいお話だった反動か、今回はホークが不在です。これが本筋とは関係ないところの話なんですが意外と新鮮。しかも、今回はラスト以外では恋人のスーザンも不在という珍しい状況で、スペンサーは愛犬のパールと再登場で美貌の凄腕弁護士のリタと一緒に事件の謎を追いかけます。このあたりもちょっと新鮮で、個人的には良かったです。 
 また、本筋に戻って、事件のほうもプロットは一直線に進んではいくものの、途中で定番のありふれたプロットならば助かるべき筈の人物が死んだり、実はこんな真犯人がいたというような人物がいなかったりと、ちょっとずつ変化球を投げて来たかなという感じです。一本調子だけれど、少しずつずらせてあるというか。著者本人もマンネリにならないように部分部分で調整しているのかなという感触がありました。今作、前作、前々作とちょっとパターンを変えて来ているのが個人的には好感触のスペンサーシリーズです。
 あいかわらず、マッチョでタフで、あんまり頭脳派ではないスペンサーですが、一人くらいはこういう愚直な私立探偵がいてもいいかなと思います。