小説・漫画好きの感想ブログ

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「原始の骨」 アーロン・エルキンズ著 感想

 ギデオン・オリヴァー教授の活躍するスケルトン探偵シリーズの最新作です。
 今作の舞台はジブラルタル海峡に面する町、ジブラルタル。古代から、ムーア人がやってきたり、スペイン人が攻め込んだり、イギリス軍が占領統治したりとなにかと色々な民族がやってきたこの町は、海上交通上の要衝であるというだけでずいぶんと苦難の歴史を辿りました。
 しかし、数年前にネアンデルタール人と原生人類の間の種を越えた交配があったという証拠を示す埋葬遺骨が発見されて、今度は考古学的に大きな注目を浴びることになりました。というのは、ここでネアンデルタール人ホモ・サピエンスの交配の証拠が見つかったからです。今までの通説では、ネアンデルタール人ホモ・サピエンスはまったくの別種のもので、両種は共存せずに、ネアンデルタール人は一方的に駆逐されたものとされていたのが、ホモ・サピエンスの女性の遺骨と、ネアンデルタール人ホモ・サピエンスの交配された子供らしき骨が一緒に埋葬されているのが見つかり、これが交配の証拠だとなったのです(種というのは別の種と交配して子孫を残せないから種となるわけで言葉が矛盾しますが)。
 その際に、発掘された骨の鑑定をしたのがギデオンだった関係もあり、ギデオンはジブラルタルで、その母親と子供(俗にファーストファミリーと呼ばれ、母親はジブラルタル・ウーマンと呼ばれている)の発掘5周年の学会と表彰式に招待されてこの地へ赴きます。そして、、そこで例によって例の如く、殺人事件に巻き込まれます。特に今回はまともにターゲットとして狙われます。
 誰が、一体何の目的で、ジブラルタルのようなところで彼を殺そうとするのか。ギデオンは現地で活躍中の旧知の警察官と一緒にこの事件の解明に乗り出しますが、そこで明らかになったものは、誰にとっても予想していなかった苦い真実でした。
 ということで、、、スケルトン探偵シリーズの最新作なんですが、実に手堅いです。ギデオンと妻ジュリーの会話も、観光名所案内も、事件の核心にきっちりと骨の分析を持ってくるところも、一風変わった警察官とのコンビネーションも、学者世界特有の衒学的な会話も、すべてが手堅く,安心しきって、いつものなじみのスケルトン探偵の世界に入り込めます。悪くいえばマンネリですが、でも、この軽さと手堅さのバランスの良さは他のミステリ作品に決してひけをとらない水準だと思います。
 安心してお勧めできる一冊です。

原始の骨(ハヤカワ・ミステリ文庫)

原始の骨(ハヤカワ・ミステリ文庫)