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「白川静 漢字の世界観」松岡正剛著 感想

 漢字界の大巨人、白川静についての評伝というか概観の新書で、僕のような門外漢にはちょうどいいレベルの読み物でした。これを読めば、素直に白川静というのがどのような人であったのか、その発想や証明したものがどれほどアジア全土を含めても驚異的であったのかという事がよくわかります。ただ、惜しむらくは、この白川静氏が発見? 証明? 発表したそれらが漢字の成り立ちや意味ということについて、学校教育、小学校や中学校の授業には生かされていないなという事実が厳としてあることです。
日本の教育現場では、中国での分類方法や昔からの学説のほうが、いまだに幅を利かしているのだなぁと改めて思います。
 これを読めば、日本語をなくすべきである、とか、英語を公用語にしてというような話はやっぱいかんよ、漢字文化圏(という言い方も最近では廃れてきているけれど)というものが漢字というものに準拠してそこに精神世界や文化史が凝縮して成立してきたんだという事実が抹消されていくような方向性はダメだよと思われるはずです。そして、漢字というものの成り立ちや、漢字そのものがいかに歴史や文化を担っているか、がわかっていただけるかと思います。
 新書ですが、読みやすいですし、文章全体から白川静氏に対する敬愛の念が滲み出ていて興味深いとともに心地よかったです。最近,尊敬の念をストレートに感じる文章ってのが少なくなってきているので気持ちよかったです。

白川静 漢字の世界観 (平凡社新書)

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漢字―生い立ちとその背景 (岩波新書)

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