小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

「よるくも」1巻 漆原ミチ著 感想 

 本年36冊目の紹介本です。
 かなりダークな世界観をもったコミックです。初読みの作家さん、初読みの漫画でしたがなかなか面白く継続を決めた作品です。
 この作品世界の中には、上・中・下の世界があります。
 上は、富める者たちが住む「街」。中は、貧しい者たちが住む「畑」、下は、その下にある暗くて恐ろしい深い「森」。この世界の住人たちは、「街」「畑」「下」のいずれかの世界に属し、その世界の掟に従って暮らしています。
 この世界を支配しているのは、法とも言えないような法で、そこは、掟を破ったり、ルールを破壊するもの、そして弱者にとっては、すぐに死が待ち受けているような過酷な世界です。かなり陰惨で危険な世界、といっていいでしょう。
 主人公の高岡キヨコは、そんな世界の「畑」にある食堂の看板娘で、美味しいものを安く出すことに夢中な女の子です。そして、彼女とこの世界で出会うのは、「森」から現れた「よるくも」と呼ばれる使い捨ての殺し屋です。彼は、教育を与えられず、ほとんどの言葉も知らず、出来ることは人を痛めつけることと殺すことだけです。彼のような存在は「森」では使い捨ての存在としてたくさんいます。ただ、彼らの中できちんと育つものは稀で、彼らは「森」の権力者たちの慰みものとして殺されたり、訓練中に死んだり、身体に異常をきたして死ぬものが殆どです。
 実際、よるくもも身体の痛覚という痛覚がまったくない異常な身体になっていますが、不憫なのかそのほうが幸せなのか本人はそれすらも気づいていません。外見は普通ですが、言葉がわからない為にまわりとトンチンカンな会話しか出来ません。しかし、人を殺すことや痛めつけることに冠しては、まったく感情一つ変えずにあっさりと片付けてゆきます。
 この作品は、こういうかなり歪んだ暗い世界の物語で、実際には、今紹介した二人以上に異常で頭のネジがおかしく、倫理観も、モラルも、正常な思考も持っていないであろう人物もたくさん出てきますし、この世界のなりたちを含めてまだまだ謎が多く残っています。
 一体どういう方向に話が進んでいくか、どういう結末を迎えるのかさきが全く見えません。
 絵は少し癖がありますが、ひょっとしたら大化けする作品かも知れません。

よるくも 1 (IKKI COMIX)

よるくも 1 (IKKI COMIX)