小説・漫画好きの感想ブログ

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「みくもとかさね」1巻 山崎峰水著 感想 

 昨日に引き続いて、漫画を一冊。
 このお話は、妖怪というか民話伝承文学系の漫画で、男子高校生の「視える」二人組が、地域の神様や守り神などに頼まれたり憑依されたりして、悪霊やら物の怪などを退治するお話です。
 神社などに奉納している破魔弓を作る家系に生まれた「みくも」と、視えるだけではなくて民俗学などについての幅広い知識をもつ「かさね」の二人が、ときに神様に頼まれ、ときに偶然に、ときにやむを得ずに事件に関わっていくお話は、設定だけきくとよくあるありがちなパターンに思えます。しかし、実際は構成やお話の作りとしてはかなり新しいタイプのお話です。それが特徴的に現れているのが、二人(とくにみくもの方が)の事件への立ち位置です。 
 今までのこの手の漫画作品だと、はじめは嫌々であったり、偶然であっても、だんだんと主人公達が使命感にかられて日常から逸脱していったり、戦闘的な性格になっていくものだが、この作品ではかなりそこが違う。あくまで、二人は好奇心や頼まれごと、偶然で動いていて自ら何かを退治しにいきたいというような欲求はもっていない。まぁ、そもそもがみくもの能力というのはあくまで何かに憑依されて発揮するものであり能動的なものではないし、かさねは実際の意味での戦力ではなくてあくまで知識的な補助や解説であって、拝み屋や退魔師といったものではないから、それがしかるべき位置ではあるのだけれど、ポジションとしては珍しいものです。強いて探せば、漆原友紀の「蟲師」に近いが、あちらとは違って、あくまで高校生であり生業にしてはいないしそうしなければ生きていけないというものでもないところに大きな差異があります。もっとも、神様や妖怪、怪異の源の描写がさまざまで、いわゆる普通の神様に見えないデザインの神様なども多々でてきており、その広範さやむしろそれらが体系だっていないことをあえて表現するやり方は蟲師に近いかも知れません。
 あと構成という点でもう一つ挙げると、かさねの方には一つのモチベーションというか原因があってそれらの心霊的なものに近づいていっていることが第四話で提示されます。内容を簡単に話すと、肉親が神隠しにあったままとある異空間にいること、そしてそこには主のようなものが存在していることが示されています。ただその空間についてのくだりはちょっとホラーかつ大変な要素が絡んでくるおどろおどろしい世界のように描写されているようで、単なる高校生の二人がその事件を解決できるのかどうか、そういう立ち位置にまでいけるのか、また何者かにそれを手助けしてもらえるのかというのが、これが長編漫画になっていた場合は一つの大きな山になっていくと思われます。
 先が楽しみなシリーズです。
 「非日常」でありつつ「日常」を描くというバランスの難しいジャンルにいるこの漫画がどうなっていくのか楽しみみです。

みくもとかさね 1 (ヤングキングコミックス)

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