小説・漫画好きの感想ブログ

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「陋巷に在り 顔回伝奇」3巻 酒見賢一・羽生生純著 感想 編集

 あれ?  昨日にこのレビューを読まなかったけ? と思った方、デジャブではありません。2巻と3巻が同時発売だったのです。しかも、原作はかなり長い長いお話だったんですが、この3巻で漫画版は完結という話になっているのです。けっこう驚きの事実ですが、それなら三冊まとめて同時発売でも良かったんではないかと思うのですが、そのあたりにどういう意味があったかは不明。まずは一幕の終わりです。
 さて、あらすじですが、この三巻では、九泉(黄泉)の世界へ主人公の顔回がおりていき、最愛の女性を連れ帰るというシーンが描かれています。このくだり、実は個人的な思い入れがあるシーンで不覚にもやはり心を激しく動かされてしまいました。
 絵柄が(しつこいですが)ちょっと苦手な漫画なんですが、このシーンは、世の中の全ての小説・漫画の愛情の告白のシーンとしても十本の指に入るだろうという激しい告白シーンなのです。簡単にかいつまんでいえば、敵の呪術師ととらわれのヒロインという二人の女性が目の前にいて、一人だけは地獄から連れ帰れるけれど二人は連れて帰れない。全員で帰ろうとすると片方はここで死ぬことになるという究極の選択を主人公が迫られるんですね。当然、普通であればとらわれのヒロインを連れて帰れば終わるのだけれど、主人公はその呪術師にも心惹かれているし、呪術師も彼のことを本当に心底惚れきっているという複雑な状況。この究極の選択に主人公はあえて一つの解決を図るのですが、結果は見事なまでに悲劇が待っていて、しかもそれが二段オチになっているという苦しいシーンなんです。そこでまさに血を吐くような台詞を顔回が吐くところで原作読んでいるときは泣いてしまいました。そういうシーンだけに、漫画版でもやっぱりぐっときてしまいました。こういう事実を前にすると、漫画って、絵柄もそうだけれど、ストーリーもやっぱり極めて大事なんだよなと思わずにいられませんでした。 
 人を愛するという気持ちの強さ・激しさ・理不尽さが堪能できたので、絵柄が苦手な漫画でしたけれどやはり読んで良かったです。←だったら小説を読み返せばいいという話もありますが、それはまぁ置いといてくださいね。話終わっちゃいますから。

陋巷に在りー顔回伝奇 3 (BUNCH COMICS)

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