小説・漫画好きの感想ブログ

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「所轄刑事・麻生龍太郎」 柴田よしき著 感想

 ひさびさに文庫新刊の紹介。
 東京の下町の新米刑事、麻生龍太郎(決して麻生太郎ではないので注意!)の短篇集。
 彼は、日本剣道界の一流選手でありながら、同時に推理力に溢れた、ちょっとした些細な事から事件解決への道筋を見つける優秀な刑事となった。謙虚で、優しく、でもその内面には自分がゲイで女性に愛情を持てず、執着ということに関して普通の人間とは同じような感覚を持てないという自覚をもつ人物です。
 そんな彼が、新米から少しずつ成長していくに連れて、定年間近の刑事と組んだり、またはキャリア刑事と組んだり、同期の刑事と組んだりしながら事件を解決していきます。
 
 という物語なんですが、柴田よしきファンとしては、この麻生龍太郎刑事は実はおなじみの人物。彼女の傑作「RIKOシリーズ」や「聖なる黒夜」にも麻生龍太郎は出てくるのです。しかも、この作品に出てくる正義の担い手としてでない彼がいるのです。実は、彼の変遷の最初の1ページ目を、この本は示してくれているのです。
 とはいえ、そういう予備知識がなくても、単独でもこの作品は、まだまだ新人刑事ながら将来の天才ぶりを予感させる一人の刑事の物語として十分に佳作な出来となっています。短編集なので強烈なインパクトや、プロットの複雑な物語もありませんが、よくまとまっています。すでにシリーズを読んだ人も、そうでない人も問題なく読める一冊です。
 

所轄刑事・麻生龍太郎 (新潮文庫)

所轄刑事・麻生龍太郎 (新潮文庫)