「グイン・サーガ126 黒衣の女王」 栗本馨著
グイン・サーガ最新刊です。
いよいよアニメも始まり(アニメについては激しく賛否両論ありますが)、記念企画もどんどんと出て来ているグイン・サーガの最新刊です。
さて、本巻のあらすじは「パロへとやってきたイシュトヴァーンがリンダに対して求婚をする」というただ一文で終ってしまう内容なんですが、それでもとても面白かったです。
普通の恋愛話であればここまで面白くないのでしょうが、この二人はこのグイン・サーガの最初の最初のほうで、深く愛し合い将来を一度は誓い合っていただけに、そして、そのあとのそれぞれの結婚や配偶者との死別を知るだけに妙に面白かったです。いみじくもリンダが述懐するように、この二人はある意味一番複雑なヤーンの運命の糸で何度もその人生を交錯させられているようで、今までの二人の人生が、読んでいてフラッシュパックのように甦ります。
草原での誓いを持ち出して再びよりを戻すように持ちかけるイシュトヴァーン。なんだかんだと理由をつけて、口では嫌だと言いながらも、内面ではイシュトヴァーンの求愛をどこかで求めているリンダ。まわりのヴァレリウスやマリウスの思惑はともかくとして、この巻が楽しかったのはリンダがひさしぶりに人間らしい感情をもっているように見えたからでしょうか。前までの数巻と比べたらリンダがいきなり昔に戻ったように感じますが、はりつめた生活の中で少しずつ精神的に追いつめられていたとすれば、それはそれで頷けるしこちらのほうがより自然な気がします。彼女に求められる役割は未亡人として国を治めることなんですが、彼女の本質はやはりそこを求めてないようで、であれば「豹頭王の花嫁」という結末は代え難いにしろ、二人がもしも上手く結ばれていたらなんてことを想像せずにはいられません。
そうすればイシュトヴァーンも、リンダも、或はナリスもまた違う人生を歩んでいたかも知れないですね。
- 作者: 栗本薫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/04/05
- メディア: 文庫
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追記:グインサーガ50巻分を一冊にまとめての2万5000円ほどの特装版がでるそうです。けっこういい特典もついているし、一冊あたり500円ほど考えれば決して高い買い物ではないですね。まぁ、既に既刊すべてを持っている身としてはちょっと迷うところですけれど。50冊分を1冊に、、どれだけ分厚くてみっしりと文字が詰まっていることか。。。京極夏彦作品どころの話ではないですね。