小説・漫画好きの感想ブログ

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「ジミー・ザ・キッド」 ドナルド・E・ウェストレイク著

 ドナルド・E・ウェストレイクの追悼本読み。
 シチュエーションコメディ的な泥棒もので個人的にも好きなドートマンダーシリーズながら、ちょうど読み落としていた作品でもありました。 
 ただ、今作は、きっちりと笑わせてくれる泥棒ものという点ではいつも通りなんですが、いつもとは大きく違う趣向がありました。それは、この作品自体が、リチャード・スタークの書いた悪党パーカーシリーズの誘拐ものの一編をもとネタにして事件が展開するというパロディになっているという点です。悪党パーカーはかなりハードな話で、ドートマンダーとは相容れない雰囲気なんですが、この作品はそれを逆手にとってシリアスなパーカーものの話を模してドートマンダーが事件を起こすととことんコメディになるという点がメタ的な点でも面白かったです。
 無論のこと、そんなことはまったく気にせずに一つの作品として読んでいただいても面白いんですけれど、そういう背景があるのでこれでドートマンダーシリーズや悪党パーカーシリーズに興味をもった方がいたら是非他の作品も読んでみてください。
 小道具や舞台設定が昔を感じさせますが、そのあたりは気にせずに読んで下さいね。どうしても携帯電話もなければ自動車電話があるかないかが話のポイントの一つになったりしたら時代を感じてしまうかとは思うのですが、古典ミステリはそんなことを気にしてしまうと面白くなくなるので読むときはとっぷりと70年代アメリカニューヨークにひたって下さい。
 

ジミー・ザ・キッド (角川文庫)

ジミー・ザ・キッド (角川文庫)

 追記:同じ作者がまったく雰囲気も違う別シリーズというと、ローレンス・プロックの探偵マットスカダーシリーズと泥棒バーニィ・ローデンバーシリーズもありますが、あちらもお勧めです。