小説・漫画好きの感想ブログ

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「十八面の骰子」 森福都著

 
 四季さんにお勧めいただいた中国の宋の時代のミステリで、構成的には、連作短編集という形で適度な長さのものが数作入っています。暖かいウーロン茶でも飲みながら、月餅でも食べて読むとちょうどよいくらいの長さのものがバラエティ豊かに入っています。
 さて、物語のあらすじですが、すごくシンプルにわかりやすく例えると、中国版「水戸黄門」。或るいは「暗行御史」という漫画を知っていたらあれからオカルトや妖異を省いたものをイメージしてもらってもよろしいでしょう。身分を隠して、国のあちこちをまわり潜入調査をし、事実関係の調査が終わると、皇帝の代理人たる身分を証明するものを見せ独断で事件を解決する。それがこの作品でいうところの「巡按御史」という役職で、主人公の趙希舜こそがその巡按御史であります。彼は、見た目こそ15歳の子供にしか見えませんが、中身は実は25歳の切れ者御史です。
 従者として、美声と美貌のいかにも貴公子風の傅伯淵(彼はときに御史のフリをして主人公が捜査しやすいようにします)。護衛役に剣術遣い賈由育の二人を引き連れて、問題があると思われる地方を旅する主人公(彼らの場合は水戸黄門のように漫遊のついでに事件を解決するわけではなく、評判の芳しくない知事がいるところへと潜入の旅をします)。彼は見た目こそ子供ですが、その類い稀な推理能力と持ち前の行動力で、事件の裏に潜む真実やトリックを暴きます。
 そして、そのトリックがいかにも中国的なものであったり、その時代ならではのものであるのが、とても興趣に溢れていて面白かったです。別の時代であれば成り立たない、その当時、中国であるからこそのネタがよい感じでした。道具立てが凝っていて中国ものという珍しい設定もそうですが、主人公たちの過去もけっこう気になるような書かれ方をしていましたので、続編を読むのが楽しみです。
 追記、読んでいるときは思いつきませんでしたが、主人公、見た目は子供で中身は大人の名探偵というと名探偵コナンくんのようですね。この表紙のイラストを見る限りでは全然そんなラブリーなキャラクターには見えませんが(それを言うなら、美男子のはずの傅伯淵もホラーな感じになっちゃっていますけれど)。
 

十八面の骰子 (光文社文庫)

十八面の骰子 (光文社文庫)


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