小説・漫画好きの感想ブログ

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「目薬αで殺菌します」 森博嗣著

 皆さま、ご心配をおかけしておりましたが、ようやく私、体調が戻って参りました。
 今回の喘息発作の直接の引き金はおそらく台風のせいですが、根本的にはやはりなんだかんだいって体力の衰えというか疲労がたまっていたのだと思いますので、しばらくはあまり無理せずにゆるゆるとレビュー中心にやっていきたいと思います。
 「はねるのトビラSP」の堀北真希の見る目のなさと可愛さのアンバランスさに癒されつつ、ぼちぼちいきます。
 
 さてさて、で、緩やかな回復の第一段のレビューは、森博嗣さんの「目薬αで殺菌します」です。
 森博嗣の最新作で、Gシリーズ(ギリシア文字シリーズ)の第7弾です。
 今作もあいかわらず謎のギリシア文字絡みの事件が起こりますが、その背後におそらくは真賀田四季博士が関わっているだろうという話になっています。ただ、シリーズをお読みになっている方はよくご存知のことですが、このシリーズ、巻が進むにつれていわゆる殺人事件(今回も殺人事件は発生します)の位置づけやトリックなどはどんどんどうでもいい方向に進んでいます。シリーズ全体としての焦点が、四季博士が社会の裏側で想像のつかないどんなことをしているのか、という事の方にテーマが移っていっている、しかも7巻まで進んでいるのに具体的な像が見えてこなくなっているということで本当に殺人事件はどうでもいい話になっています。
 事件のあらすじだけだすと、神戸で、アルファという製品名の目薬に劇物が混入されていたという事件が発生。まだ同様の事件は起こっていないものの、社内で同様の事故が発生したとして、製薬メーカーから内部調査を依頼された赤柳初朗(ちなみに赤柳はこの作品では探偵として登場)。彼は、混入することができたとされる、倉井という女子社員と研究開発をして現在は大学の準教授となった社員に接触を試みるが、相前後して殺人事件が発生。その殺人事件の死体を発見したのが、このシリーズのヒロインである加部谷恵美であり、発見された死体の手には、問題の目薬αのケースが握られていた。。。といった感じで何かプロットがしっかりしたミステリもののようですが、ミステリとしては???レベルで、バカミスというのでもなく、本当にそこに主題が明らかに置かれていない感じになっています。
 逆にいえば、推理もの、トリックものとしてこれを読もうとすると、最近の傾向通りに「何これ?」という話になっています。
 そういう流れがあって、ある意味、推理小説としてはここのところ盛り上がらない感じになっていたこのGシリーズですが、今回は別の側面からの盛り上がりを見せています。それは、先に名前を出したヒロインの加部谷が、海月にアタックをかけるという恋愛モードです。このシリーズでは、加部谷も含めて恋愛モードはあくまでジャブ程度で、勘違いのレベルの扱いしか今までなかったのに、ここにきてのいきなり全開モードにかなり盛り上がりました。ただ、今までの彼女の狙いはその海月の友達で先輩の山吹じゃなかったの? と思ったりもして、なかなか波乱な展開です。
 このシリーズの本当の意味での名探偵というか、天才的頭脳でいつも事件の真相を見抜く海月がまさかこの段階で、しかもこういうシチュエーションで恋愛モードのターゲットになるとは思いませんでした。ただ、そういうヒロインに対する彼の対応はけっこう笑えるくらいに淡白ではありましたが。
 ともあれ、Gシリーズとしてはひさしぶりに楽しめる作品でした。
 あと三作で、このシリーズがどういう地点に着地するのかも目が離せません。
 

目薬αで殺菌します (講談社ノベルス)

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