「血の流れるままに」 イアン・ランキン
リーバス警部シリーズの一冊です。
(購入順序間違えました。あたかも新作かのように本屋さんの各地の本屋さんのフェアで平積みされているから。つい)
さて。
エジンバラ警察のリーヴァス警部は、やはりもともとがとんでもない人のようです。などと書くと、わけがわからないので前説をすると「紐と十字架」という作品で、リーバス警部の自分自身でも記憶を封印していたような軍隊時代の異常な体験が出て来て、リーヴァスが特殊なのかそれともこの作品世界が特殊なのかと態度を保留していたのです。でも、この作品を読んで、やっぱりリーヴァスはとんでもない刑事だという事がよくわかったので、続きも読まないといけないシリーズであることが判明しました。
いい意味で、このシリーズは個性的だし、作品世界の妙にどす黒い世界観は、なかなかに特殊です。この世界だけ読むとエジンバラって、ゴッサムシティですかというくらい悪徳の栄えな都です(エジンバラというと大貴族のいる保養地のイメージがあっんですが完全に崩れました)。ですし、主人公のリーヴァスに対して全く情け容赦のない、主人公に対しても何の特典や幸運を与えない著者のイアン・ランキンの態度はハードボイルドの主人公に対してはとても誠実で好感が持てます。
最近のイギリスミステリってけっこう面白いじゃない、と英国小説を再評価してもいいくらい気にいりました。
あらすじは、今回は割愛しますが、おおざっぱにいうと企業や政界を巻き込んだ汚職事件と、両親に反抗して家をでる家出少女絡みの誘拐事件が絡み合っていて、そこにリーヴァス警部が登場というお話です。最初の方でちょっとネタわっちゃっていますが、警察内部も腐敗しているし、政治絡みの汚職だけに犯人も「大局を見よ」なんて感じで暗に精神的な揺さぶりをかけてくる話です。なので、読後感がすぱっと爽やかかと言われるとそんなことはないし、釈然としない部分は残ります。なにより、そういう事件を解決するヒーローであるはずのリーヴァス警部の私生活は、一人の男としてはどちらかというとより悲惨な方向に進んでいるような気がします。でも、そこがまたいいのです。
暗いけれど、人間的にはひどいし、動物は結構虐待するし、忘れっぽいし、アル中だし、不潔だし、それなのに何故かかっこいいリーヴァス警部のシリーズ。ちょっとおっかけてみたいです。
- 作者: イアンランキン,Ian Rankin,延原泰子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/06
- メディア: 文庫
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