小説・漫画好きの感想ブログ

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「魔界都市ブルース 妖婚宮」菊地秀行著 

 ひさしぶりの秋せつら、魔界都市<新宿>の魔界都市ブルース・シリーズの最新刊です。
 「魔界都市新宿の申し子」、「美しき魔人」と称される、秋せつらは、せんべい屋の副業に人探し屋を営んでいます。やくざものやサイボーグのみならず、魔導師や妖怪、怨霊、異次元の侵略者さえもが跋扈する魔界都市。そこで人探し屋を営む彼は、もちろんのことながら圧等的に無敵な強さを誇るとともに、情報源のネットワークを新宿の隅々にまでもっています。だから、彼への依頼は決まって100%果たされる事になるのですが、そこは新宿のこと、彼が見つけ出した時には時すでに遅し対象者が死亡してしまっていることもあります。ただし生死は問わずですが、その対象者は必ず見つけ出される運命にあります。
 今回の依頼でもそれは同様。IT財閥の御曹司ながら、婚約者の滝王真奈との結婚を前に失踪した月島やしきは、秋せつらに見つけ出されます。
 しかし、そもそも美しく東北の名家の令嬢である滝王真奈から、どうして月島は逃げなくてはならなかったのか。それは、彼女が人間ではなかったからです。彼女は東北の妖蛇の血を引く一族の姫だったのです。恐ろしい荒涼たる北の果ての血に住む妖怪の一族の娘だったからです。彼女の正体に恐怖し、新宿に逃げ込んだ月島。その月島に、妖姫ながら恋をしてその後をおっかけてきた真奈。彼女に横恋慕していた、これも協力な妖魔の一族の一つ森童子一族の跡取りである森童子識名。彼も彼女を追って新宿へやって来ます。
 さらに、彼らより先に月島を見つけたせつらの前に立ちはだかる一族中の強者の妖魔たち。 
 美しき魔人秋せつらが、依頼された人捜しをする過程で次々とあらわれる強敵たちをうち倒し、そこにもう一つの主題として悲しい恋の行方が描かれるこのシリーズ。今作でも終わってみれば、その路線はきっちりと踏襲されています。あぁ、忘れるところでしたが、秋せつらの「僕」から「私」への変化もしっかりと描かれています。ということで、スタンダードでいい意味での安心感のあるマンサーチャーシリーズでした。あくまで強く、美しく、圧倒的な秋せつら。けれど、そろそろ、「夜叉姫伝」のような圧倒的に強い強敵の現れる話も読んでみたいなと思うのですが、いかがでしょうか。

魔界都市ブルース 妖婚宮 (ノン・ノベル 849 魔界都市ブルース)

魔界都市ブルース 妖婚宮 (ノン・ノベル 849 魔界都市ブルース)

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 ちなみに、今回から表紙とイラストはデスノート小畑健さんです。仕事しまくってますねぇ。