小説・漫画好きの感想ブログ

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『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』 西尾維新著

 西尾維新のデビュー作にして人気シリーズの第一作文庫化です。
 ということで、今迄読んでなかったのですけれど、読んでなかったのが勿体なかったです。シンプルに面白かったです。作品そのものや登場人物の好き嫌いの評価では意見が割れるかも知れないけれど、オリジナリティや独創性という点では誰が読んでも大いに針が振り切れていると言うと思います。それくらい個性的です。
 主人公からしてこの一冊ではまだまだ謎だらけですが、そんなことが霞むくらいに他の登場人物が全員エキセントリックでおかしくてインモラルです。共通点はただ一点、全員がとある技術や能力のスペシャリストで、若い女性であるということ。こういう特殊設定の(ある意味、全員が女性のジョジョの奇妙な冒険クラスの能力者ばかりの)話だから、キャラ萌え小説かとたかをくくったら大間違い。
 しっかりとミステリとしてのレベルの高さも併せ持っているということに驚きました。これは、設定がいかに奇妙で風変わりであろうとも、小説世界の中でのミステリとして読めばきちんと本格推理をやってのけている小説でもあるのです。たぶん、僕もそうでしたがライトノベルということやキャラ萌えが話題先行しすぎて手を出していない人は騙されたと思って読んでみて下さい。かなり完成度が高い事に驚くと思います。売れるだけの事はあるし、メフィスト賞はやはりなかなか侮れないなぁと思った次第です。 
 少しだけネタバレになりますが、絶海の孤島での連続殺人事件の謎。この謎に関してはたぶん読者の大半が実際の連続殺人事件の手口とトリックには気がつくことと思います。そして、悪くいえば優越感をもって、天才たちばかりの物語をすら軽く読み解いてしまう自分にニヤリとすると思うのですが、最期にまたどんでん返しがしっかりなされていて、主人公にシンパシーを覚えるとともに、作者の本格ミステリ書きとしての能力の高さとここまで特殊な設定できっちりと作品を完結してしまう技術に驚くと思います。もちろん、好き嫌いは別れる作品だと思います。でも、意外なラインで森博嗣作品が好きな人はいけるんじゃないかなと思ったりもします。
 
 追記:この文庫シリーズでは講談社は講談社定番の背表紙基本デザインすら変えてしまっていますが、それだけのネームバリューってことでしょうか。西尾維新恐るべしです。

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)