小説・漫画好きの感想ブログ

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「ハッピー・バースディ」新井素子著

 103冊目の紹介本です。
 ハッピー・バースディと聞くと普通はすごく幸せな連想をするでしょう。色とりどりのろうそくがささったケーキ。ラッピングされたプレゼント。ちょっとした「おめでとう」の言葉。暖かい部屋。お祝いメール。花束。プレゼントの包みをあけるときのわくわく。誰かのバースディプレゼントを選ぶときのわくわく。そういうものを思い浮かべるでしょう。もちろん、あの有名なハッピー・バースディのメロディも思い浮かべるでしょう。中には、電気グルーブのほうを思い浮かべる方もいるかも知れません。ともあれ、楽しいイメージを思い浮かべることでしょう。
 しかし、この小説はそれらのイメージを覆します。ハッピー・バースディーという楽しいうきうきるようなタイトルとは対極のかなり思い詰めた小説です。下手に書き込むとネタバレしてしまうし興趣を削いでしまうタイプの小説なので敢えて内容には触れませんが、かなり重いし苦しいです。特に前半から中盤にかけてはかなり気持ち悪い展開をします。強いてキーワードを挙げれば「電話」がその主役になりますが、かなり苦しい気持ちになります。いつもはのほほんとした文体の新井素子さんですが、同じのほほんでここまで気持ち悪いことが出来るのはこれこそ芸なのでしょう。
 ともあれ、先日取り上げた「グリーン・レクイエム」「緑幻想」や「新婚物語」などを彼女の陽の作品とするならば、これは陰のほうの代表作といってもいいでしょう。

ハッピー・バースディ (角川文庫)

ハッピー・バースディ (角川文庫)

 最近お誕生日を迎えた方、この本の紹介がお気に触ったらごめんなさい。もちろんの事ながら、全っ然他意はありませんので^^