小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

「グリーン・レクイエム/緑幻想」 新井素子著

 
 合本の後編の方です。
 自分、読んでいないと思っていましたが、読んでいましたというオチがつきました。でも、中身がとても良かったので満足はしています。さて。
 「グリーン・レクイエム」の直後から始まるこの物語。
 主人公の明日香が自殺とも言える最期を遂げた後、彼女の遺体はとある機関の手によって東京の真ん中に運ばれます。黒田というその機関の主は、他の機関からのもろもろの養成を政治力ではねつけ、彼女の遺体を守り続けますが、明日香の死によって運命を変えた前回の登場人物たちはそれぞれがそれぞれなりの苦痛の中に過ごす事になります。明日香を守りきれなかったと自分を責めて彼女の遺髪をもって日本中を彷徨する信彦。明日香たちを隠し庇護していたものの最期で彼女たちを守りきれなかったと悔やむ三沢。彼女たちの研究からのけ者にされたと逆恨みする教授。エイリアンの生き残りの夢子と拓は、植物たちと手を携えて人間たちを滅ぼすかどうかで激論のすえ決別。各者が苦悩の底に沈み込みます。
 あるものは怒りに我を忘れ、ある者は廃人のようになり、ある者は復讐の鬼と化し、、、と。その中でいち早く地球の植物たちの主とコンタクトを取ることが出来た拓は「世界樹」と呼ばれる存在と出会い、植物たちの心を知ります。ただただ「自分ではないあなた」を愛する植物たちの心を。やがて、肉体としては滅んだ明日香たちが関係者全員を屋久杉のもとへ集め、彼らの心にそれぞれへのメッセージを届けます。。。。
 ということで前作の続きですが、今作品はスケールが大きく、植物視点からの人類への気持ちというものが語られる感動作になっています。たぶん二十年ぶりくらいに読み返したことになると思いますが、良かったです。甘ったるいくらいの恋愛ものの部分と、スケールの大きいSF的発想が入り混じっていて素晴らしく良かったです。

グリーン・レクイエム/緑幻想 (創元SF文庫)

グリーン・レクイエム/緑幻想 (創元SF文庫)