小説・漫画好きの感想ブログ

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「さよなら妖精」 米澤穂信著

 「犬はどこだ」に続いて読んだ米澤さんの本ですが、これがまた素晴らしく、今年度に読んだ本の中でも三本の指に入るくらい面白かったです。
 古典部シリーズと同じく高校生が主人公ということで、もう少し軽い感じを予想していたのですが主人公の芯が熱くて、ぐっと心に入ってきました。主人公は、弓道部所属の高校三年生。彼と、友達の「センドー」こと大刀洗万智は梅雨前のとある雨の日の学校帰りに、不思議な少女と出会います。マーヤと名乗る少女は、単身で二ヶ月間この街の知り合いのところに下宿する予定でしたが訪ねてきてみればその人は既に死亡し、途方に暮れていました。彼は彼女をこれも友人で旅館の娘である白河に紹介、マーヤは旅館に住み込むことになりました。かくして、彼とその友人たちとマーヤの、短い、しかしこれ以上ないくらい大きな変化をもたらす二ヶ月間が始まるのでした。。
 ということで、その二ヶ月のちょうど一年後の回想シーンから始まるこの小説、青春ものというくくりでいえばまさに青春ど真ん中ですが、ただの青春恋愛ものではなく、ユーゴスラビア出身の将来政治家を目指す一人の少女をヒロインに据えたことで、主人公の悩み・葛藤・世界観の変化・恋の激しさが全ての面においてさらに際立ち、読んでいてやるせなく苦しくなるような小説に仕上がっています。恋愛的な要素もさることながら、成長物語としても素晴らしい出来です。
 間違いなし、文句無しにお勧めです。
 この小説を読んで改めて思ったんですけれど、同学年であれば、もうこれは仕方のないことだけれど、どうしても女性の方が早く成熟してしまっています。男子自身は気付いてない、馬鹿さ加減、気の回らなさ加減、子供さ加減が本当によく描けていて、それがまたぐっと読み手それぞれの昔を思い出させてくれてはまり込む要素となっています。是非読んでみて下さい。

さよなら妖精 (創元推理文庫)

さよなら妖精 (創元推理文庫)


 追記:同氏の「春期限定いちごタルト事件」の漫画版が出ていましたね。誰か読んでないかな。