小説・漫画好きの感想ブログ

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「イスタンブールの群狼」 ジェイソン・グッドウィン著

 アメリカ探偵作家賞受賞作品。
 19世紀、列強にじわじわと侵食されて斜陽のオスマントルコ帝国の首都イスタンブール。大々的な閲兵式を控えた近衛新軍の士官4名が行方不明となり、そのうちの一人が市街の馬小屋で大鍋に入れられた惨殺死体で発見される。事態を重くみた軍司令官は、帝国のどこにでも入り込めるヤシムという宦官に事件の解決を依頼する。。。イスラム世界で、列強に圧力をかけられながらもなお絶大な権力をにぎるスルタン。その身辺、大奥にもせまる影たち。事件の背後で暗躍するらしい、かつての最強軍団イェニチェリたちは、何を狙っているのか。
 ということで、舞台設定も雰囲気も独特で、時宜的にも興味をもてる一冊になるはずの本です。
 はず、というのはどうにも訳文が悪いのか、それとも時制や視点がころころ変わるせいなのか、状況がいまいち散文的にすぎる感じがしてプロットの巧みさが感じられないせいです。ところどころすごく面白いのに全体の印象としては散漫、まとまりきれていない感じがします。そのあたりが非常に残念です。
 主人公のヤシムのキャラクター造詣もけっこう魅力的なだけに、もう少しなんとかならなかったかなと残念です。宦官で料理に長けていて、ふだんは本の山に埋もれて街の一角で没落したポーランド大使や近所の八百屋と親しいコーヒー好き、なかなか見れない設定の主人公だけに、本当に惜しいです。まぁ、アメリカ探偵作家賞受賞作ということなので、この人の他の作品も読む機会は生まれそうですから、その時は、できたら同一主人公で別の話を読んでみたいと思います。
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イスタンブールの群狼 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

イスタンブールの群狼 (ハヤカワ・ミステリ文庫)