小説・漫画好きの感想ブログ

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「朧夜ノ桜」 佐伯泰英著

 テレビドラマも好評だった、佐伯氏の代表作「居眠り磐音」シリーズの最新作です。
 今作では、いよいよ主人公の佐々木磐音が、今津屋おこんとの挙式を挙げるということでシリーズの大転換点になる一作でした。もっとも、二人の結婚や、そのためのそれぞれの養子縁組などがここ数巻の間にあったので、あくまで予定調和のうちではあるものも、それでも一つ話が決着したという感じがありました。なんといっても、結婚式に今までの長いシリーズの中で登場したいろいろな人物が集まってくる様子は、シリーズ物のそこの深さを感じさせました。
 最近では、磐音があまりに強くなりすぎたのと、聖人君子ぶりが板につきすぎてきたので、最初の頃のような人間くささが若干薄れていてそれがファンとしては寂しかったのですが、この巻ではそれが薄れ、ひさびさに食べ物を前にすると人の話をきかず食べ物に没頭してしまう彼の癖が見られてそのあたりも長いファンにとってはちょっと嬉しい一コマでした。シリーズ物は、ある程度そうしたマンネリ的な部分がないとかえって寂しいものですから。
 まぁ、そんなこんなでお祝いムードな巻ではありますが、命を狙われるのもいつもの通りで、今作では田沼意次配下が集めた西国の武芸者五人が彼の命を狙っているのがわかり、そのうちの何人かとは死闘が繰り広げられます。そのうちの一人は二天一流ということで宮本武蔵の流儀を使う剣客。
 剣客ものという側面でもしっかりと楽しませてくれる一冊でした。
 ということで、評価は5の4でいきます。

朧夜ノ桜 ─ 居眠り磐音江戸双紙 24 (双葉文庫)

朧夜ノ桜 ─ 居眠り磐音江戸双紙 24 (双葉文庫)