小説・漫画好きの感想ブログ

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「日日平安」 山本周五郎著

 こんばんは、樽井です。
 この時間に今日は帰宅です。今日はあたたかな一日だったせいか、十二月も押し詰まった年の瀬であるにも関わらず寒さを気にせず済みました。たまにはこういう暖かい日もいいものです。おとついはわりと寒かっただけによけいにそう思っただけかも知れませんが、今年も雪はまだちらとも降りませんし、暖冬なのかも知れません。
 さて。


 「日日平安」 山本周五郎


 昨日に「椿三十郎」を見たこともあって、またバーバままさんのサイトで取り上げられていたこともあって、本作を読んでみました。
 時代劇そのものがわりと好きなので、けっこう大御所と呼ばれる時代劇作家の作品は一つは読んでいるのですが、この山本周五郎さんは珍しくまだ一冊も読んだことがない作家さんだっただけに、これを契機と読んでみました(池波正太郎とか司馬遼太郎とかは割に早く読んだのにどうして山本さんだけ手つかずだったのか不思議ですが)。
 内容のほうは、時代短編集ということで、全然別個の11の作品が収められています。
 連作ではなく、主人公の境遇や時代もばらばらの11の独立した作品群です。
 映画「椿三十郎」の原作である「日々平安」も入っていますが、むしろこれはこの短編集の中ではどちらかといえば扱いが軽い一篇。映画は大筋を借りているだけで、かなりストーリーやキャラの性格が変わっています。映画は別物と考えたほうがよかったみたいです。あらすじだけ見ると近いんだけれど、小説を読むと別物と見た方がいいくらいです。
 さて。個人的にこの短編集の中で感じ入ったのは、かなり趣きが違いますが、「水戸梅譜」と「しじみ河岸」「ほたる放生」の三編。「水戸梅譜」は、さきの副将軍で有名な水戸光圀のもとに仕官に訪ねた武士とその息子の生き様を描いた作品で、その主従関係のまっすぐさに妙に感動してしまいました。仕官がかなわなかった後もその息子がなした事、その事実に感動しました。「しじみ河岸」と「ほたる放生」は非常にやるせない話で、読んでいて非常にものがなしくなる話ですが著者の語りの力をまざまざと感じさせる作品でした。特に「ほたる放生」は救いのない話なんですが、妙に気になるし、いつまでもひきずる話でした。
 短編集で傾向も雰囲気もばらばらですが、それだけに山本周五郎という作家が自分にあっているかどうか見極めるのにはちょうどいい一冊だと思います。
 追記 これは新潮文庫版のレビューです。同タイトルでハルキ文庫からも出ていますが、中身が全然違うのでご注意して下さい。

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日日平安 (1965年) (新潮文庫)

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