小説・漫画好きの感想ブログ

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「おまけのこ」 畠中恵著

 こんばんは、樽井です。
 今晩は、流行語大賞の発表がありましたね。東国原知事の「どげんかせんといかん」と、ハニカミ王子が流行語大賞だったとか。まぁ、順当といえば順当。「そんなの関係ねぇ」が選ばれなくてほっとしました^^
さて。
 

 「おまけのこ」 畠中恵

 ドラマ化もされて大人気の「しゃばけ」の、文庫シリーズでの最新刊がこの「おまけのこ」です。
 シリーズももう四作目ということで、かなりこなれてきたこのシリーズですが、人気に負けぬだけの完成度と面白さを完備しているこのシリーズのこと、まだまだ人気は続きそうです。シリーズ第一作が出たときには「妖怪もの」+「時代劇」という括りだけみたおどろおどろさから果たして売れるのだろうかと心配しましたが、本当に内容のいいものはきちんと売れてくるようで、今では押しも押されぬ大人気です。 主人公は、回船問屋兼薬種問屋長崎屋の病弱な跡取り息子、一太郎とその周囲にいる妖かし達。
 手代として店で働く、佐助と仁吉はそれぞれが白沢と犬神というそれぞれ力ある大妖を筆頭に、屏風の中に住む「屏風のぞき」、お約束の猫又、大入道、そして集団で出てくる鳴家と呼ばれる小鬼たち。いずれも水木しげるの「ゲゲゲの鬼太郎」などの作品ではおなじみの妖怪たちです。彼らは一太郎と仲良く暮らし、外にでることも容易にままならない身体ながらも頭が切れる若旦那の一太郎の手足となって、時に町で起こるさまざまな事件を解決します。
 今回も、さまざまな謎、事件を一太郎は快刀乱麻を断つがごとしに解決していきます。
 ただ、このシリーズの読みどころはそうしたミステリーの本筋だけにあるのではなく、江戸の人情話や人の暮らしのありように、よく出来た落語を聞くようにどっぷりと浸ること、そしてそこで少し幸福な気分に浸ることにも大きくあります。もちろん幸せなハッピーエンドの話だけでなく、やりきれなさや切なさも人情話の大事な一部であり、本作でも「こわい」という名前の妖しが出てくる話がありますが、この作品は非常に切ない話です。ただ単にふわふわと軽かったり甘かったりする話だけでないところがこの作品の良さであることを再認識させます。ただ、本作のタイトル作品「おまけのこ」、タイトルだけ見るとこの作品も悲しくなりそうですが、この話は本巻の最後の作品なのですが、読んだあとにすごく幸せな気持ちになる作品で、この本全体の読後感を幸せに満ちたものにしてくれています。
 この「おまけのこ」だけで本作を読んだ価値があるような暖かい作品です。
 そんなこんなで、この「おまけのこ」も他の「しゃばけ」シリーズ作品同様にお勧めです。
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おまけのこ (新潮文庫)

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