小説・漫画好きの感想ブログ

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「走ることについて語るときに僕の語ること」 村上春樹著


 村上春樹氏の最新刊です。
 といっても、春樹さんファンだけに一気に読むのがもったいなくて、自伝も含んだエッセイ集ということもあって少しずつ読んでいたらとっくに最新刊というには古くなってしまいました。
 さて。小説でしか村上春樹を知らない人にとっては意外かも知れませんが、彼は走ることをこよなく愛しています。数々のエッセイ等にもそのあたりのことは出て来ていましたが、彼が普通に一日10キロくらいきっちり走り込めることに驚き(年齢からすればかなり凄いことだと思います)、またその走るという行為を通じて、また走るときの事に託して自分のことをそのまま誇張も虚飾もなく話している姿勢に非常に好感が持てました。
 もとからエッセイ等では素の部分を出してくれていましたが、それでもここまでちゃかしたりごまかしたりせずに、そのままの自分を出してくれている本はなかったのじゃないかなと思います。ありのまま、自分の感じるまま、思うままに彼の考えること、考えたことが書かれています。日本のいわゆる文壇とか評論家とは縁を切り、何かをやるときにはそれだけに専念してコミットしていく彼の姿勢もこの本を読むとより深くわかると思います。
 と、書評的に書くとなんだか堅苦しい文章になってしまいましたが、実際のこの本は極めて読みやすく堅苦しいところは全くありません。先日読んだ別の本が読み通すのが苦痛だっのたに対して、太り気味で走ることなんて考えただけでぞっとする自分のような自堕落な人間でもいつもどのページもするすると興味深く読めました。やはり村上春樹さんの文章は抜群なんだなと改めてそこも思いました。
 エッセイなのであらすじを紹介とかはできませんが、読みやすく、読んだあとにちょっと自分の生き方を考えたりもできる一冊です。お勧めです。

走ることについて語るときに僕の語ること

走ることについて語るときに僕の語ること