小説・漫画好きの感想ブログ

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「姑獲鳥の夏」 京極夏彦

 こんばんは、樽井です。
 ちょっとずつ前に読んだ本とか本棚の本等も紹介していきますね。引っ越して本がたくさん詰まった段ボールを開けるのはいまだにちょっとためらわれるのですが、さすがにちょっとずつは整理していかないといけないんでぼちぼちとスタートレックのDVDなど見ながらやっています(ちなみにスタートレックの新しい版でピカード艦長やライカー、データ少尉が活躍する番です)。
 さて。

 京極夏彦のデビュー作です。
 京極夏彦の全てはここから始まります。デビュー作らしからぬ完成度の高さと登場人物の強烈な個性で衝撃的なこの作品が、後々の京極堂シリーズの最初の一冊となります。
 主人公は、中禅寺明彦、古本屋の主人にして神主、時に憑き物落としを生業とする人物で常に不機嫌そうな顔をしています。そして、彼の同級生の関口巽。彼は一応小説家ということになっていますが、まだまだ駆け出しだし遅筆なので普段は三文文士のような事もしています。そして、不可思議な能力をもった元華族、榎木津礼二郎。そして、警官の木場修太郎。後々の主役級のキャラクターがこの巻で既に揃っています。
 時代背景は第二次世界大戦からしばらくの東京。
 この物語は、関口巽がとある奇妙な疑問を中禅寺に尋ねるところから始まります。曰く、「二十ヶ月もの間、子供を身籠り続けることは出来ると思うか?」と。産婦人科医としても有名な久遠寺医院という病院の双子の娘のうちの片方が、もう二十ヶ月以上も子供を身籠っているという風聞を彼は聞きつけていたのだ。しかし、よもやその噂の真相を突き止める事が自分の過去と向き合うことになろうとは関口巽にも予想もしていなかったことでした。。。。
 ミステリものの新しい波を起こしたこの第一作については、そのトリックが果たして「アリ」なのか「ナシ」なのかと論争されていますが、その部分に瑕疵があったとしてもこれだけの魅力的なキャラクターが造詣されたこと、またそのシリーズがその後のミステリ小説の世界の一つの流れとして大きな影響力を与えたことを考えれば、ミステリ好きの人には是非読んでみて欲しい一冊です。シリーズの後半になっていくにつれ、旧作品のキャラクター関係も入り組み、著者の衒学趣味も極まり、どんどんに話が長くなり辞書より分厚い本というのがこの京極堂シリーズの定番になっていきますが、その根本と楽しみ方はそれらの蘊蓄とキャラクターの異常なまでの個性の強さと、著者の言葉と文章に酔うことであり、そういう意味ではシリーズの全てのエッセンスが詰まったこの本こそは後のシリーズを読み続けられるかの試金石としてふさわしい一冊です。
 昨年、堤真一阿部寛、宮迫などで映画化されましたが、今年は次巻「魍魎の匣」も近々公開予定だとか。今更手にとるのは、、と言っている人にこそ読んでほしいです。
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姑獲鳥の夏 (KODANSHA NOVELS)

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