小説・漫画好きの感想ブログ

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パレード 川上弘美著

 こんばんは、樽井です。
 ただいま戻りました。今日は帰りにラーメン屋さんに寄って来ました。よってこやさんの看板に釣られてひさしぶりにラーメンです。ラーメンって最近どこもかしこも濃いみそ味とかトンコツ系が増えているので(よってこさんもその系統ですね)、たまにはあっさりとしたラーメンもいいなという気持ちだったはずなのに、メニューの壁に負けて結局担々麺を食べて来ました。
 さて。
 ラーメンならぬそうめんを食べて昔話が始まる今日の紹介本は川上弘美、パレードです。

 パレードは、川上弘美さんの代表作といっていい感動作品「センセイの鞄」の主人公であるツキコさんとセンセイの物語の外伝です。本当は過去の話か未来の話かってことをはっきりとさせたいんですが、ツキコさんがセンセイと一緒にいる昼下がりに自分の子供時代のことを振り返ってお話するという構成なので、後日談というわけにもいかず、さりとてプレというわけにもいかず、外伝という位置に置いておきます。
 内容は、さきに書きましたようにツキコさんの子供の頃の思い出話。もちろんのことながらセンセイが出てくるわけでもなければ、どちらかというと「センセイの鞄」のイメージが強くて、川上弘美作品をそれしか読んだことがない人からすると、ひょっとしたら拒否反応というか違和感が出るかも知れない内容です。だから、ちょっとだけ雰囲気に触れると、不思議な空間や登場人物がそこにはいます。そして、川上弘美作品をたくさん読んでいる人で、例えば「神様」とか「蛇を踏む」とかが好きな人ならまた懐かしい川上ワールドがここにもといった印象を持つと思いますが、逆に「センセイの鞄」だけ読んでいる人ならそれはちょっと違和感があると思います。
 と、既に書きすぎた気もしますが、これ以上書くと先入観を与えすぎてしまうので、あとは手にとって読んでみて下さい。
 本当に短い作品です。たぶんあっという間に読んでしまうことでしょう。けれど、きっと、読んだあとになんだか不思議なこころもとないゆらゆらとした何かが胸の中に生まれることと思います。
 これは褒め言葉ですが、川上弘美さんという方は本当にちよっと希有な、なんともいえない不思議な雰囲気をうまく取り出して描く作家さんで、本書でもその本領は遺憾なく発揮されています。でも、でもちょっとだけ欲をいえばもうちょっとストレートな「センセイの鞄」の前後日談が一ファンとしては読みたいです。

パレード (新潮文庫)

パレード (新潮文庫)