小説・漫画好きの感想ブログ

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『おんみつ密姫』  米村圭吾著

 こんばんは、樽井です。
 帰宅致しました。明日はお休みなので、ちょっとのんびりモードに移行します。泉佐野の暑さが応えたのかちょっと熱っぽかったりもするのですが、明日温泉にでも行けば回復するでしょう^^
さて。福田相殺のもと、新執行部が発表されましたが、、、どうでしょうか。なんだか本当に絵に描いたような派閥政治があからさまに透けてみえすぎでいかがなものかと思いますねぇ、正直。町村さんに、伊吹さん。二人とも、個人的にはどうも好きになれません。特に伊吹さんは文部大臣としての資質にはかなり欠ける発言が多かっただけに、?マークがつきます。
 今度もしょっぱなから、政治とカネ問題については「1円領収書がいいかどうかわかりませんが」なんて言っているようですし、いくら福田総裁が1円領収書に否定的だから党内的にはOKの発言になっているかしりませんが、国民はそこに納得していないから参議院で手痛い目にあったというのに何も学習していませんね。そういう人が文部大臣であってよかったのかとそれこそ任命責任を問いたいものです。森喜朗さんがなにやら力を盛り返しているみたいなのも気がかりです。自民党の今回の福田氏登用も長い目で見れば失敗、というような気がします。
 麻生さんは逆にちょっと見直されたのではないか、と思います。
 さて。 
 醜い現実の政治世界に飽き飽きしたからというわけではないですが、今日は政治がらみでもからりと明るいのを。

 
 『おんみつ密姫』  米村圭吾著  新潮文庫

今日紹介するのは、ちょっとお気楽な江戸時代を舞台にしたお姫様冒険ものです。このお姫様ものというジャンル、昭和初期までは結構はやっていたジャンルらしいんですが、「あんみつ姫」以降廃れていってしまったようです。どんなジャンルかというと、おてんばなお姫様がお城を飛び出して城下や諸国を漫遊し、その土地土地で巻き起こる事件を鮮やかに解決するというもので、すごくおおざっぱに言えば、お姫様版の「水戸黄門」のような話です。ここに、姫君ものですから、姫の美貌やきっぷに惚れた部下や仲間が増えてきたり、心配性の爺やがでてきたりします。
 この「おんみつ密姫」もそういうお姫様ものの系譜の一つです。
 主役は豊後の国の温水藩の姫君、密姫。
 彼女はてんからお転婆すぎる御姫さまで、おかげで普通大名の娘というものは江戸藩邸で暮らさなければならないものですが、あまりにお転婆ということで「病気のため」と称した豊後で育てられました。参勤交代で父が江戸にいるときも、ひたすら野山を駆け巡り馬も乗り回す活発なお姫様です。その彼女と、父上でもある藩主が遠乗りを楽しんでいたときに、父親が暗殺されそうなったところから物語は始まります。
 金比羅売りの変装で父に近づいた殺し屋。間一髪でそれを姫が撃退したまではよかったのですが、田舎の小藩の大名、とりたてて命を狙われるようなことは何もないはずと姫は首を傾げるのですが、その夜に父上から聞かされた話にびっくり。父は、四国の風見藩の藩主と藩の合併をひそかに計画していたのだ、そして、密姫自身をそちらに嫁として送るつもりだったのだ。すわ幕府の隠密のしわざかと思い立った姫君は、刺客たちをやっつけて、さらには時の将軍様である第8代将軍の徳川吉宗に幕府に暗殺をやめさせるため旅に出ようとします。もちろん無茶苦茶無謀なお話ですが、とめるかと思いきや母の甲府御前は密姫のたびのおともに愛猫のタマを貸し与えます。
 何と,タマこそは母の甲府御前におつきとしてくだってきた忍者が仕込んだ忍び猫だというのです。半信半疑ながらも猫をつれて旅に出た密姫は見事目的を達することができるのでしょうか?
まるで絵本のように荒唐無稽なお話ですが、著者の米村圭吾の語り口調の文体がとても柔らかくまるで講談を聞いているかのように楽しめます。米村氏は別の姫君のシリーズも出していますが、語り口は年を重ねるごとに軽妙で軽みのあるものになってきています。特にこ作品では、もともとが新聞連載という形式をとっていたためさらにそのあたりが強化されており,短い合間にハラハラドキドキと彼の語り口の続きを待つように本が読めます。ただ、内容のほうはおおむねはさきほど話したような荒唐無稽な感じに聞こえますが、実はしっかりとした時代考証の上でお話は「天一坊事件」につながっていきます(天一坊事件についてはさまざまな本がこれまた赤穂浪士の討ち入り本のような数多くでておりますので、興味があるかたはまた調べてみて下さい。いろいろな説が乱れ飛んでいてこれはこれでまた面白い歴史上のお話です)。あの事件は本当はこういうことではなかったのか、というのが虚実を織り交ぜながら語られます。
 口当たりや外見はあくまでソフト、お菓子のようですが、中身は実は政治の裏の駆け引きを描いた作品というのがこの本です。もちろん、お姫様小説ですからそのまま読んでも冒険活劇風にとても楽しく中学生くらいでも読めますが、深読みするとさらに読み込めるという構造です。
 たまには、こういう作品もいかがでしょうか。

おんみつ蜜姫 (新潮文庫)

おんみつ蜜姫 (新潮文庫)