小説・漫画好きの感想ブログ

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くちぶえ番長 重松清

 おはようございます。樽井です。
 衝撃的な首相辞任から一夜明けての本日です。今日は朝のニュースでもそればかりやっていますね。どこも情報のソースには限界があるのか同じような内容ですが、ひたすらバッシングが続いていた状況からは微妙に軌道修正があって、「安倍さんも大変だったんだね」的な雰囲気が出ています。まぁ、国民性としていいところでもあるんですが、相手が降参・白旗あげるとまぁまぁ君も頑張ったんだから、という風になってしまうのがもろに出ていますね。けれど、今回はことが首相としての資格・責任についての話だけに、それはそれとして行為・結果・姿勢で見なくてはならないんじゃないかなと樽井的には思いますね。
 子供じゃないんだから、まわりが言う事を聞いてくれないだとか、それを言ったのは自分じゃないとか、そういう言い訳は一国の宰相としてはよくなかったとただそれだけのことなんですけれどね。
 (ところで、麻生太郎さんが次の首相になりそうということで、アニメ関連株とか、まんだらけとか、アキバ系、漫画関係の出版社の株が上がっているのはなにがなんだかと笑ってしまいましたね。円谷プロ売却より株価への影響が強いというのはなんなんだか^^)
 さて。

 今日紹介する「くちぶえ番長」は小学校の四年生のお話です。
 父の昔からの友達の子供が転校してくるという話をきいて、わくわくどきどきの主人公。
 その前にあらわれたのは、スポーツ万能、勇気と元気の固まりの「番長になりたい!」というマコトくん。髪の毛を頭のトップでちょんまげのように結ったマコトくんは、そんな台詞からすると男の子のように聞こえますが、実は女の子。一輪車に乗っていつも颯爽としていますが、決して乱暴者ということでもなく、最初には女子に嫌われますが徐々にクラスにも認められ溶け込んでいきます。主人公とも友情が深まっていきます。
 小学校の四年生という一番大きな変化の時期の一年を彼女と、彼女を見つめる主人公の少年視点で描いていきます。
 特筆すべきは、その中でのイベントの数々や上級生下級生の微妙な関係、心情の動き、転校生とクラスのなじみ方とか全てが「お話」なんですけれど、本当にリアルな感覚で戻ってくる書き方感じさせ方であることです。
 自分は、むかし学童保育所の指導員をしていたのでこのくらいの年の子供たちと常に一緒にいたので、特にそう思うのでしょうけれど、本当に巧いです。「あったあった」「そういうのあった」というような体験に照らした共感懐かしさだけでなく、心の動き方や感じ方が妙にリアルに確かにそうだったと思わせてくれて、読んでいる間は子供の時に戻ってしまいました。
 普通児童文学といっても、すごく巧い作品を除いてはあくまで「読み手」としての意識は残ってしまうんですけれど、この「くちぶえ番長」に関しては物語に入り込んでしまいましたね。多少きれいすぎるというか子供のずるいところがあまりないのを除けば本当にリアルで童心に帰って読める作品です。おすすめ。
 読書感想文なんかにもいいんじゃないかなぁという作品ですよ。

くちぶえ番長 (新潮文庫)

くちぶえ番長 (新潮文庫)