アヒルと鴨のコインロッカー 伊坂幸太郎著
寝る前に一つ紹介。
仮面ライダー剣とかいう作品を見ながら(かなりある意味かっこいい系のライダーです)。
さて。
いきなりですが、年を取ってくると、いつしか新しい作家さんや小説家さんにチャレンジするのかおっくうになってくるところがあります。
昔から読んでいる作家だけでももう十二分にいいものがあるのに、新しいものに敢えて手を出さなくてもいいのに、と思うときが疲れているときにはごくごく稀にですがあります(知り合いにはその好きな作家の新作についてさえ、過去の傑作を読み返すだけで十分なのに、あえて新作を読まなくてもいいんじゃないかという人もいたりします)。実際、手を出してみて一作目は良かったものの、二作目,三作目が駄作だったりつまらなかったりするとショックだったりということもあります。特に海外の作家さんでこのパターンだと泣きそうになったりします。
だから、新しい作家さんの作品を買うときは少し緊張するのですが、ときにその中に大当たりの方が出てきます。今日紹介する伊坂幸太郎という作家はそんな作家さんの一人です。
『アヒルと鴨のコインロッカー』井坂 幸太郎著 創元推理文庫
第25回吉川英治文学新人賞受賞作。
という肩書きがこの作品にはついていますが、そういう肩書きを抜きに十二分に面白く、そして切ない物語です。この伊坂さんという方の作品は最初に読んだ『オーデュボンに祈りを』『ラッシュライフ』『重力ピエロ』『陽気なギャングが地球をまわす』も含めて、すべての作品が当たりだったので期待して読みましたが、その予想を裏切らない内容でした。
作品は、北陸のとある大学に入学する為に引っ越してきた狂言まわしの「僕」と、その引っ越し先の同じアパートの隣の部屋に住んでいる河崎と名乗る背の高いちょっと異色の人物が本屋に本を強盗しにいく現在編と、琴美という女性と河崎、ダルジという琴美の恋人のブータン人とがとある事件に巻き込まれる二年前の過去編が交互に進行して行きます。
まるで違う二つの話が、現代と過去がどう繋がっているのだろうと読者に推理させながらすすんでいくのですが、これがまた上手いし、いくつものトリックが叙述の中に仕掛けられていてミステリ好きの人でもまいったと心地よくだまされると思います。のどかで平和に見える現在の裏の二年前の過去はどうだったのか、二年前の事件と現在編の間でいなくなった人物はどうなったのか、暗示の通りの結末だったのか。一気に読ませます。
彼の作品は、登場人物がとてもユニークなのが特徴ですが、今回も主人公はともかくとして、つかみどころのない二枚目で女たらしの河崎、行動力が抜群で動物好きの琴美、そしてブータンから留学してきているドルジ、そして幾人かの脇役たちが皆とても個性的でキャラクターが創り込まれています。彼らの台詞の一つ一つもよく考えられていて、二回目を読もうという気にさせてくれます。これは、ミステリ小説でありながら、トリックやミステリ部分だけでなく、キャラクターたちが非常に魅力的だからのことでしょう。
現在モーニングで連載中の小説もそうですが、伊坂幸太郎の小説の主人公たちはクールに見えて、ちょっととぼけた味があり、それとバランスのとれたスタイリッシュな文体が魅力です。
是非手にとって読んで欲しいなと思います。
伊坂幸太郎さんは本当にかなり期待の作家さんなので(京極夏彦以来かな)、これからもちょくちょく取り上げると思います。
←よかったおしてあげてください。
- 作者: 伊坂幸太郎
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- 発売日: 2006/12/21
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