小説・漫画好きの感想ブログ

小説・漫画好きの感想ブログ

「世界の変化を知らない日本人 アメリカ人は日本をどう見ているのか」日高義樹著 感想

明後日は参議院選挙当日。
選挙を前に、自分の政治的スタンスというか考えていることを書こうとする前に、肩慣らし的に昨日読んだ本の紹介を。日高義樹さんの本で、発刊が二年前の五月。原発事故の直後ですね。なので、原発後の対応をめぐっての民主党政権・菅総理の対応やらその周辺で起ったさまざまなことなども含めて、いろいろと議論が展開されています。著者は、アメリカのほうに深いパイプがあるのか、アメリカの政治中枢やキッシンジャー、海軍中枢部へのインタビューなどから構成され結論を導いています。が、本論に入る前に、一言苦言。「世界の変化を知らない日本人 アメリカは日本をどう見ているのか」というタイトルは、半分は内容にあてはまりません。タイトルそれ自体はセンセーショナルで、扇情的で、日本人特有の「まわりの人たちは自分のことをどう思っているんだろう」という感覚に訴えてくるいいタイトルだとは思いますが、後半だけでよかったでしょう。ちょっと内容とそぐわない。
この本の内容は、「日米関係の今までとこれから。中国とアメリカのこれから。アメリカは日本をどう見ているか。日本が中国よりになった場合に日本がどうなると分析しているか」につきます。だから後半だけで良かったと思います。
あと、前述のようにアメリカサイドに偏ったインタビューになっていますし、この時点では日本はまだ民主党政権がしばらく続く前提だったので、その上での分析がなされています。ただ、アメリカが日本をどう見ているのか、日本の民主党に対してどういう見解をもっているのかが示されていて、その部分では今読んでも遜色はないし、逆に、今現在の空気・雰囲気だけで裏付けのない本がバンバン出ている中でその手の本を読むよりは意味があるとも言えます。
ということで、まとめ。

原発事故に対しての日本の姿勢はありえないと海外メディアは見ている。それは政府というのは、公共の利益を最大にするためのプロ集団で、日本の原発そのものの性能は問題ない(と世界は見ているようだ)が、それの立地策定や非常事態のときの対応について政府や国家機関がきちんと責任(規制や協力含めて)をとらないことがありえないから。企業の論理だけで動いていて、責任をとらない政治は異常事態だと思っている。
・アメリカは「トモダチ作戦」を展開したが、あれはアメリカの国民の多くが日本人はトモダチだと草の根でかなり思っているからほぼ誰も反対しなかったし、異論も出なかった。基本的にアメリカは親日である。が、同時にそれは中国がどさくさで日本に対して軍事行動を取る可能性があると判断したからでもある。あのとき、アメリカは動かせる軍隊はすべて動員した。が、民主党政権はそれに対してかなり難色を示して事実上拒否したところも多かった。
・軍事的な面からみたら、日本政府は自衛隊の陸軍の大半以上を救難活動に参加させたが、海外ではこれに関して非常に違和感を感じている。アメリカも自然災害のときに軍や州兵は参加させるが、一部のみだし他の警察や消防などの支援や運用をスムーズにいかせることがメインで、国防的観点からも自衛隊の人員のほとんどを国防の任から外したのは外敵を考えなさすぎる。
民主党政権は、イデオロギーによる共産主義にはまったく同調していないが、反自民党・自民利権では非主流派がほとんどだっただけに、意味もなく反米。そのベクトルで中国にとにかく親しくしようというのが強く、小沢氏の訪中などがその好例。
しかしながら、日本が中国と同盟しても、日本は他の国同様に中国の衛星国家にされるだけのことであり、それは日本の国益にはまったくならない。
・このままであれば、中国・北朝鮮の軍事力は増大し、日本は効果的な戦力大系を整えなければ北東アジアで貧乏くじをずっとひかされつづけるだろう。
オバマ政権の限界。オバマ政権はいままでの歴代の大統領とはすべてにおいて異質。特に「力」を行使しない大統領。エジプト、アラブ、北朝鮮、中国、すべての国々に対して今までのアメリカであれば真剣に取り組み、厳しい対応をとってきたであろうが、オバマは話し合いで解決しようとするがのらりくらりとかわされているうちに相手の軍事的能力は上がり続けている。
これはアメリカの政権交替がおきない限りはかわらない傾向であろうと思われる。

世界の変化を知らない日本人 アメリカは日本をどう見ているのか

世界の変化を知らない日本人 アメリカは日本をどう見ているのか