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「海辺のカフカ」  村上春樹著 感想 

海辺のカフカ 村上春樹著 感想 

海辺のカフカ。ものすごくざっくりとあらすじを説明すると、15歳の少年田村カフカが東京・中野の自宅から家出をし、高松のさる図書館で運命的な出会いと別れを体験する小説です。その過程で、彼が何故家出をしなければならなかったのか、彼の父親や、彼が4歳のときに彼を残して家を出た母親のこと、そして彼の運命に絡まる不思議な超常的な何かが描かれます。
ストーリーの大筋としては、彼・カフカのパートと、彼と直接の面識はないままに彼の運命に大いに関わることになるナカタさんと星野くんのパートに物語は別れます。カフカのパートでは一人の頑な自我を持った少年が抗いがたい運命に翻弄されながらも、なんとかそれを乗り越えようと必死に生きる姿勢が描かれ、ナカタさんパートではユーモラスに、けれど非現実と現実の狭間でナカタ老人の戦いが描かれます。
人は、理不尽であろうと、抗いがたいことであっても、きたるべき時がくれば大きな嵐にまきこまれ、それを切り抜けた後と前ではまったく別の人間になってしまう(それがいい結末であれ悪い結末であれ)という事が様々なメタファーによって描かれているのがこの小説だと思います。
細かい筋立てを紹介したり、村上春樹作品の位置づけ、特に「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」との繋がりなどについて話しだすときりがないので置きますが、この小説は読めば読むほどに味が出るタイプの小説だとも思います。僕にとって最近までの村上春樹作品のベストは「ダンス・ダンス・ダンス」と「ノルウェイの森」ついで「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」だったのですが、ここにきて再得してみて、この「海辺のカフカ」もなかなかなに良かったんじゃないのかなと評価が高くなりました。ひょっとしたら、昔の僕にはこの「海辺のカフカ」はまだ難しかったのかも知れません。
いい小説は、いいワインのように、その時になってみなければわからない味わいというのがあるのかも知れません。
 
追記:この小説を読むとウィスキーのジョニーウォーカーの壜をしげしげと眺めたり、意味もなくケンタッキーを食べたくなるかも知れません。どこかの酒場で、フライドチキンとウィスキーで「海辺のカフカ」セットみたいなの出すと一部でマニア受けするかも知れませんね^^(もちろん裏メニューは鰻丼です)


海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)


海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)