小説・漫画好きの感想ブログ

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「小説フランス革命1巻 革命のライオン」 佐藤賢一著 感想 

 フランス革命を描いた長編大河小説です。
 ロペスピエール、ミラボー伯爵、ネッケル財務大臣タレイラン、もちろんの事ながらルイ16世にマリーアントワネットも登場します。日本人には、大枠としてのイメージはあるものの歴史的な流れや革命の経緯(一般的には、マリーアントワネットとか貴族の無茶に、困窮した国民が蜂起して・・くらいの場面が「ベルサイユのばら」の影響で一番大きいかな)背景があまりわからないフランス革命を、大河小説として描こうとした佐藤賢一氏の野心作の第一巻です。
 佐藤賢一氏のフランスものといえば大傑作の「傭兵ピエール」やら「二人のガスコン」やらの小説や、新書では「英仏百年戦争」なんかもあるくらいですから、時代や歴史考証の安定感は抜群です。そして、そういう膨大なデータを駆使しつつも、小説としての面白さを追求する方法としては、いつもながらの佐藤節が健在で、重さや堅さを感じさせません。敷いて言えば、ルサンチンマンをベースにした生々しい人間の語り口がふんだんに入るいつもの文体は文体ですが、その背後に「この誰もやったことがないフランス革命の長編小説化を俺がやってやるんだ」というような気概と自負が溢れているようで、いつもより熱がある小説になっているように思えるくらいです。 
 第一巻は、ルイ十六世が、財政再建の思惑をもって始めた国民三部会をベースに、登場人物が紹介されていきます。国王としては、財政再建のための国民三部会でしかないのですが、その思惑とは別に、これで国が変わるんではないかと熱狂する人々が多数出てきます。その中には若きロペスピエールや、もともとは大貴族でありながら第三部会から出てくるミラボー伯爵などがいます。一巻はこの二人を主軸に物語の大枠や時代背景が語られていきます。
 大長編フランス革命絵巻のスタートです。

 

革命のライオン 小説フランス革命 1 (小説フランス革命) (集英社文庫)

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