小説・漫画好きの感想ブログ

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「共和国の戦士3 クローン同盟」 スティーブン・L・ケント著 感想 

 近未来SFスペースオペラの第三部です。
 遠い未来、アメリカを中心として地球を統一した人類は、AUと呼ばれる組織を作り宇宙に連邦共和国を築いていた。しかし、いくつかの銀河の人類は、それに反旗を翻した。反旗を翻したのは、モーガン・アトキンスという人物が開いた新しいキリスト教的なものを信じるモガト教徒と呼ばれる信徒を中心とした者達。彼らと、この世界では珍しく民族的な純血を貫いた日本人たちを中心にしたニッポン、そしてアメリカ的な世界を嫌った諸国家たち。
 彼らによって、宇宙中を自由に飛び回るすべを失ったAUは、クローンを中心とした突撃部隊らを編成して決死の作戦を決行した。主人公のウェイン・ハリスンは、自分がクローンであることを知りつつも、部下を率いて敵の主星へと降り立つ。彼は戦争を終わらせることが出来るのか? そして、彼がそこで見たものは?
 スペースオペラでありながら、宗教、文化、システム、クローン問題などを盛り込んだこのシリーズの完結編である第三部は、予想外の終わり方をします。ひょっとしたらこういうオチを予想していた方もおられるかも知れませんが、僕は全くの予想外でした。そして、どちらかというとあまり好きなオチ・展開ではありません。
 けれど、この物語の風呂敷を上手く折り畳む矯めにはこのオチしかなかったのかも知れませんし、こういう最後なら続編が出てもスムーズに話が展開するかも知れません。

 あと、個人的な感想ですが。
 この小説の作者の方は日本に対してどうにも誤解と偏見をもっているような気がしてなりません。全ての人類がごくごく一部を除いて混血している宇宙社会においても、日本人だけが住む星や日本人だけの不思議なシステムがあったり、それらの代表はショウーグンであり、彼らの部下達は皆サムライというのはいささかどうなのかと言いたいです。もちろん、ショーグンやサムライといっても、彼らが別に帯刀しているわけでも居合い切りをするわけでもないんですけれど、そういう呼び方で認識するというのは果たしてどうなのかと思いました。
 さきほどちらりと書きましたが、この小説の中にはキリスト教を中心とした宗教的要素やクローンに魂はあるのかないのか、神とは国家のことではないのかという思索があったりと蘊蓄や思考実験的に読むべきところもあったりするだけに、偏り具合がなんだか不可思議でした。

共和国の戦士 3: クローン同盟 (ハヤカワ文庫SF)

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