「エージェント6」下巻 トム・ロブ・スミス著 感想
エージェント6、下巻です。
上下巻通しての感想でいえば、この作品は非常によく出来た作品でした。
(どうしても多少ネタバレになりますのでご注意)
物語冒頭の仕掛けが過去から始まることで、今までの二作品「チャイルド44」「グラーグ57」をもう一度読み返そうという気になったし、そこでのあれこれがキッチリとこの作品に引き継がれているのは見事です。
また、そうした長い長い作品の中であるにも関わらず、主人公のレオという人間が色々な意味で最後までぶれずに(超人的な精神の強さも逆にアンバランスなほどの依存性の高さや弱さも)あいかわらずのレオのままで、最後まで感情移入できたことも良かったです。今回は、前作以上にエンタメ要素が強く、ソビエトの中心から、アフガニスタンの戦地を経由しての、アメリカニューヨークの国連ビルまでのワールドワイドな物語展開があったので、普通であればそれにあわせてキャラクターも多少はぶれそうなものなのに、それもなく、最後までレオはレオらしく、物語として破綻することなく進みました。普通なら、後半もっとストイックに強いキャラになるかスーパーマン化しそうなものを、生の、どちらかというと色々なものに対して弱い部分がある人間としての、素のレオのままで最後までいったのは作者の中にレオという人間が強く生きているからに他ならず、それが読み手にまで伝わってきました。
強いていえば、最後の最後の事件解決部でのカタルシスが今少し弱い気がしますが、それは瑕疵というほどの事もなく、読み終えたあとに、三部作全部の余韻に浸ることができました。
- 作者: トム・ロブスミス,田口俊樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/08/28
- メディア: 文庫
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