「ローマ人の物語41 ローマ世界の終焉〈上〉」 塩野七生著 感想
いよいよ、ローマ人の物語・文庫版も最終シリーズです。
ローマ建国の最初、ロムスの丘から始まって、最後に蛮族に滅ぼされるところまで長い長い歴史物語もいよいよその終焉を迎えようとしています。
この長い長い物語。史実に基づいた歴史を主人公のローマ人の立場から、蛮族と呼ばれたガリアやフランクの立場から、そしてまたエジプトの立場から描いたこの長い物語も、いよいよ終わりです。時に英雄ユリアス・カエサルの活躍を描き、ときに三頭体制の崩壊を描き、ときにキリスト教の勃興と国教として絶対神聖化していくまでの道のりを描いてきたこのローマ人の物語は、滋養と示唆とよりよく生きる上でのヒントを読み手に与える歴史書でした。
まぁ、文庫版ではこれを含めてあと三冊あるのですが、ローマの最後の一ページを深い感慨とともに味あわせてくれるシリーズ最終章です。
内容(「BOOK」データベースより)
テオドシウス帝亡き後、帝国は二人の息子アルカディウスとホノリウスに託されることになった。皇宮に引きこもったホノリウスにかわって西ローマの防衛を託されたのは「半蛮族」の出自をもつ軍総司令官スティリコ。強い使命感をもって孤軍奮闘したが、帝国を守るため、蛮族と同盟を結ぼうとしたことでホノリウスの反感を買う。「最後のローマ人」と称えられた男は悲しい最後を迎え、将を失った首都ローマは蛮族に蹂躙されるのであった…。
- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/08/28
- メディア: 文庫
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追記:日本は今、海外との不幸な関係や付き合いの中で、かつてなかったほどにナショナリズムが高まっています。でも、こういう時だからこそ、(相手が本当にいい悪いは別として)どうつきあうべきか、どういうリアリズムをもった国策を取るべきか、歴史は何が最良の選択であり何が失敗であるのか、政治に可能なこととその限界を見極めさせてくれるこういう本がその指針選びの一つに傍らに持てることは幸せなことだと思います。
日中関係、日韓関係、日朝関係、日露関係、日米関係どれ一つ満足で幸せな関係でない日本人として特にそう思います。