「日本の1/2革命(二分の一革命)」 池上彰・佐藤賢一著 感想
最近の新書の中では隠れた名著といってもいいかも知れない一冊。
面白すぎて1時間たらずで一気読みしてしまいました。
・フランス革命は、実は世界の色々な革命の原型である。
・フランス革命は二段階に分かれるが、前半段階は「明治維新」と相似形である、後半段階はフランス国王とマリーアントワネットの処刑意向の「恐怖政治」になり、ここまでくるフルサイズ革命はこれ以降世界の歴史で繰り返される。
・日本の革命は「明治維新」「GHQ民主主義革命」「民主党革命」と三回あったがいずれも前段階で終わってきた。今回も今は前半が終わったところだが、ここから今までのようになし崩し的に革命が終わるのか、フルサイズ革命に進むのかの分かれ目にいる。
・政治から言葉がなくなったときに、革命が起きる。
・「人権宣言」はマニュフェストに等しいものであった。いまでいう現代政治の理想が全て入っているが、それ故にそれを唱えた政権は自らの言葉に縛られ暴走自爆していった。
・日本の革命は常に外圧によってしか発生しない。
などなど、知的好奇心を煽り、目からうろこの比較文化論的な論考が続いてゆきます。これ以外にも、ギロチンのもつ意味や、キリスト教に対してフランスが政教分離を徹底している文脈で見るとイスラム教徒などへの規制も理解できる理由とか、あるいはまたフランスやアメリカの大統領制の理由などについても「なるほど」と納得できる歴史的説明が出てきます。
(そしてその文脈でいえば、日本は英雄待望論を持ちつつも、現代では絶対に大統領制は持ち得ないことも心理学的によく理解できます)
ともあれ、良著。
聞き上手、まとめ上手の池上彰と、全十数巻にもならんとする「フランス革命」を題材にした小説をライフワークとして書いている佐藤賢一さんだからこその、これこそ本当にいい意味でのコラボ新書です。お勧めです。
- 作者: 池上彰,佐藤賢一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/06/17
- メディア: 新書
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