「ダブルダウン勘繰郎」 西尾維新著 感想

　いわゆるライトノベルの探偵ものです。
　西尾維新の小説ということで、どの登場人物も奇妙な二つ名と独創的な名前を持ち、そしてそれぞれが超人的な能力を発揮するこの本は、いわゆる一つのライトノベルのミステリとしては一つの方向性の最先端だと思います。
　名探偵という存在が普通に存在し、警察以上の捜査権をもつ世界。その世界でも一、二を争う名探偵達を連続して殺し続けた元名探偵「坂島あやめ」と、名探偵を目指す「虚野禍勘繰郎」、そしてかつて名探偵を目指したけれど挫折した語り部「すずしろむつみ」の三人を中心に繰り広げられるミステリは、極めて誇張されたマジックのように技と技のぶつかりあいの妙を見せてくれます。ある意味週刊少年ジャンプの邪道バトルのように、これでもかこれでもかと大どんでん返しと、伏線の罠が待ち構えています(そう、まるで「めだかボックス」のように)。
　蘊蓄は語られず、小市民の幸せも、市井に生きる人の苦悩もありませんが、これはこれで純粋に知能とトリックと叙述の罠を楽しませるこれはミステリの進化の形の一つです。

ダブルダウン勘繰郎 (講談社ノベルス)

　追記; ここに出てくる日本探偵倶楽部は、清涼院流水たちと一緒に構築した世界のものかと思われます。当時の流れが分からないので詳しい方いたらご紹介下さい。